
品質チェックと編集:AI原稿をそのまま使わない技術
この節で学ぶこと
前の節では、Google Opalを使って「記事テーマ・読者・文字数・文体」を入力し、構成案から本文ドラフトまで生成するワークフローを作りました。
ただし、AIが作った文章は、そのまま使うものではありません。
この節では、AIが生成した原稿を、次の4つの観点から点検する方法を学びます。
| 観点 | 確認すること |
|---|---|
| 事実確認 | 数字、日付、制度、価格、名称などが正しいか |
| 表現リスク | 誇張、断定、不安を煽る表現がないか |
| 読みやすさ | 初心者にも理解できる文章になっているか |
| 構成 | 読む順番が自然で、話が飛んでいないか |
今回の目的は、「AI原稿を疑うこと」ではありません。
AIが作った下書きを、人間が安心して使える原稿に近づけることです。
まず、言葉を整理します
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 品質チェック | 文章に問題がないか確認すること |
| 編集 | 文章を読みやすく、目的に合う形へ整えること |
| 事実確認 | 内容が事実と合っているか確認すること |
| 表現リスク | 読者に誤解を与えたり、不適切に見えたりする表現の危険性 |
| 誇張表現 | 実際より大きく見せる表現。例:「必ず成功する」「誰でも簡単」 |
| 断定表現 | 不確かな内容を決めつける表現。例:「絶対に効果がある」 |
| 構成 | 見出しや本文の順番 |
| リライト | 意味を大きく変えず、文章を読みやすく直すこと |
| チェックリスト | 確認項目を一覧にしたもの |
AIで記事を作るときは、次の流れが基本です。
flowchart TB
A[記事テーマを入力] --> B[構成案を作る]
B --> C[本文ドラフトを作る]
C --> D[品質チェックを行う]
D --> E[修正版を作る]
E --> F[人間が最終確認する]

前回は、「本文ドラフトを作る」ところまで進みました。
今回は、「品質チェックを行う」以降を作ります。
なぜAI原稿をそのまま使ってはいけないのか
AIが作る文章は、とても自然に見えます。
しかし、自然に見えることと、正しいことは別です。
たとえば、AI原稿には次のような問題が混ざることがあります。
| 問題 | 例 |
|---|---|
| 事実が不正確 | 存在しない制度名、古い料金、誤った日付を書く |
| 表現が強すぎる | 「必ず効果が出ます」「誰でも成功できます」と書く |
| 内容が一般的すぎる | どの記事にも使えそうな薄い文章になる |
| 読者とズレる | 初心者向けなのに専門用語が多い |
| 構成が不自然 | 結論が遅い、同じ話を繰り返す |
| 未確認なのに断定する | 「開催されます」「導入済みです」と書く |
AIは「それらしい文章」を作るのが得意です。
だからこそ、最後に人間が確認する工程が必要です。
ここで大切なのは、AIを否定することではありません。
AIには下書きを作ってもらい、人間が確認して仕上げる。これが現実的で安全な使い方です。
今回作るミニアプリ
今回作るのは、次のAIミニアプリです。
AI原稿 品質チェック・編集アシスタント
このミニアプリでは、AIが作った本文ドラフトを入力すると、次の内容を出力します。
| 出力項目 | 内容 |
|---|---|
| 原稿の要約 | 何について書かれた原稿か |
| 良い点 | 使えそうな部分 |
| 事実確認が必要な箇所 | 数字、日付、制度、価格、名称など |
| 表現リスク | 誇張、断定、不安を煽る表現 |
| 読みやすさの改善点 | 難しい表現、長すぎる文、重複 |
| 構成の改善点 | 見出しの順番、説明不足、話の飛び |
| 修正版 | チェックを反映した本文 |
| 人間が最終確認すべき点 | 公開前に確認する項目 |
Google Opalに入れる完成プロンプト
Google Opalで新しいミニアプリを作成し、以下の指示を入力します。
AI原稿 品質チェック・編集アシスタントを作ってください。
目的:
AIが生成した原稿をそのまま使わず、事実確認、表現リスク、読みやすさ、構成の観点から点検し、修正版を作成するAIミニアプリにします。
入力:
・AIが生成した原稿
・想定読者
・公開媒体
・文章の目的
・注意したい表現
・文字数の目安
処理:
1. 入力された原稿の内容を短く要約する
2. 原稿の良い点を整理する
3. 事実確認が必要な箇所を抽出する
4. 誇張表現、断定表現、不安を煽る表現を抽出する
5. 初心者にとって難しい言葉や説明不足の箇所を抽出する
6. 文章の重複、長すぎる文、読みにくい表現を抽出する
7. 見出しや段落の順番が自然か確認する
8. 修正方針を作る
9. 修正方針に沿って、本文をリライトする
10. 最後に、人間が確認すべき点を一覧化する
出力形式:
Markdown形式
出力項目:
# AI原稿 品質チェック・編集結果
## 1. 原稿の概要
## 2. 原稿の良い点
## 3. 事実確認が必要な箇所
## 4. 表現リスク
## 5. 読みやすさの改善点
## 6. 構成の改善点
## 7. 修正方針
## 8. 修正版本文
## 9. 人間が最終確認すべき点
条件:
・原稿にない情報を勝手に追加しない
・不明な情報は「要確認」と書く
・数字、日付、価格、制度、固有名詞は確認対象にする
・誇張表現や効果保証に見える表現は弱める
・想定読者に合わせて、わかりやすい表現にする
・文章の意味を大きく変えずに整える
・そのまま公開せず、人間が確認する前提で出力する
このプロンプトの目的は、AIに「もっと良い文章にして」と曖昧に頼むことではありません。
どの観点で確認するのかを、先に決めています。
サンプル入力1:前回作った記事をチェックする
前回の「自動記事生成ワークフロー」で作った記事を、今回のミニアプリに入力してみます。
まずは、次のサンプル原稿を使います。
# サンプル入力1
## AIが生成した原稿
AIを使えば、毎日の仕事は必ず効率化できます。メール作成、議事録作成、アイデア出し、資料作成など、ほとんどの業務をAIに任せることができます。特に最近のAIツールは非常に高性能で、専門知識がなくても誰でも簡単に使いこなせます。
たとえば、会議の内容をAIに入力すれば、すぐに完璧な議事録を作れます。また、顧客へのメールもAIが自動で作成してくれるため、人間が確認する必要はほとんどありません。今後は、AIを使わない働き方は時代遅れになるでしょう。
AIを使うことで、仕事の時間は大幅に短縮されます。まずは、業務内容をすべてAIに入力し、自動化できる部分を探してみましょう。
## 想定読者
AIを仕事で使ってみたい初心者の会社員
## 公開媒体
社内向けの学習記事
## 文章の目的
AIを日常業務に活用する基本的な考え方を伝える
## 注意したい表現
・AIに業務を丸投げする表現は避けたい
・機密情報や個人情報への注意を入れたい
・「必ず」「完璧」「誰でも簡単」などの断定は避けたい
## 文字数の目安
800字程度
この原稿には、わざと問題を入れています。
どこが危ないか、先に考えてみましょう。
| 問題のある表現 | なぜ注意が必要か |
|---|---|
| 必ず効率化できます | 結果を保証しているように見える |
| ほとんどの業務をAIに任せることができます | 過度な一般化になっている |
| 完璧な議事録 | AIの出力に誤りがないように見える |
| 人間が確認する必要はほとんどありません | 実務上危険 |
| 業務内容をすべてAIに入力 | 機密情報や個人情報の扱いに問題がある |
このように、AIが作った文章は、自然に見えてもリスクがあります。
期待される出力例
ミニアプリでチェックすると、次のような出力が期待できます。
# AI原稿 品質チェック・編集結果
## 1. 原稿の概要
AIを仕事で使うことで、メール作成、議事録作成、アイデア出しなどの業務を効率化できる可能性について説明した原稿です。
## 2. 原稿の良い点
・AI活用の具体例が入っている
・初心者にも身近な業務が例として使われている
・仕事効率化という目的は伝わりやすい
## 3. 事実確認が必要な箇所
・「最近のAIツールは非常に高性能」という表現は、具体的なツール名や根拠がないため要確認
・「仕事の時間は大幅に短縮されます」は、業務内容によって異なるため要確認
・AIツールの機能や利用条件は、各公式情報で要確認
## 4. 表現リスク
・「必ず効率化できます」は断定が強いため修正が必要
・「ほとんどの業務をAIに任せる」は誤解を招く可能性がある
・「完璧な議事録」は品質保証のように見える
・「人間が確認する必要はほとんどありません」は不適切
・「業務内容をすべてAIに入力」は機密情報や個人情報の観点で危険
## 5. 読みやすさの改善点
・AI活用のメリットと注意点を分けると読みやすい
・初心者向けに、まず小さな作業から試す流れにすると自然
・不安を与えず、現実的な使い方を示すとよい
## 6. 構成の改善点
・最初にAIでできることを紹介する
・次に、具体例を示す
・最後に、注意点と人間の確認の必要性を説明する流れがよい
## 7. 修正方針
AIを万能な道具として表現するのではなく、日常業務を補助する道具として説明する。機密情報や個人情報を入力しない注意を加え、人間が最終確認する前提に直す。
## 8. 修正版本文
AIは、毎日の仕事を少し楽にするための補助ツールとして活用できます。たとえば、メール文のたたき台を作る、議事録を要約する、アイデアを出す、文章を読みやすく整えるといった作業に役立ちます。
ただし、AIにすべてを任せればよいわけではありません。AIが作った文章には、誤りや不自然な表現が含まれることがあります。そのため、出力された内容は必ず人間が確認し、必要に応じて修正することが大切です。
また、会社の機密情報や個人情報をAIに入力する場合は、社内ルールや利用するサービスの条件を確認する必要があります。まずは、公開しても問題のない短い文章の整理や、アイデア出しなど、小さな作業から試すと安心です。
AIは、人間の判断を置き換えるものではなく、考える前の整理や下書きを助ける道具です。上手に使うことで、仕事の準備や確認にかかる負担を減らせる可能性があります。
## 9. 人間が最終確認すべき点
・社内のAI利用ルールに合っているか
・機密情報や個人情報の注意喚起が十分か
・具体的なAIツール名を出す場合、最新情報と合っているか
・読者にAIの丸投げをすすめる表現になっていないか
このように、AI原稿を「良い・悪い」で見るのではなく、どこを直せば使えるかを分解します。
サンプル入力2:エントリーシート文をチェックする
前の節では、履歴書や経験メモからエントリーシートの文章を作る例も扱いました。
ここでは、その文章をチェックしてみます。
# サンプル入力2
## AIが生成した原稿
私は、どのような状況でも必ず成果を出せる人間です。大学の地域イベント運営では、私が中心となって企画を進め、来場者数を大幅に増やしました。また、アルバイト先のカフェでも、私の工夫によって店舗全体の売上向上に大きく貢献しました。
このように、私は周囲を巻き込みながら課題を解決する力があります。貴社でも、入社後すぐに即戦力として活躍し、事業成長に大きく貢献したいと考えています。
## 想定読者
採用担当者
## 公開媒体
エントリーシート
## 文章の目的
自己PRとして、自分の強みを伝える
## 注意したい表現
・実績を盛らない
・本人が実際に担当したことを中心に書く
・強すぎる断定を避ける
・自然で誠実な文章にする
## 文字数の目安
400字
この文章にも注意点があります。
| 表現 | 注意点 |
|---|---|
| 必ず成果を出せる | 断定が強すぎる |
| 私が中心となって | 実際に中心だったか要確認 |
| 来場者数を大幅に増やした | 数字や根拠が必要 |
| 売上向上に大きく貢献 | 本人の貢献範囲が不明 |
| 入社後すぐに即戦力 | 強く見せようとして不自然になる場合がある |
エントリーシートでは、立派に見せることより、事実に基づいて本人らしく伝えることが大切です。
サンプル入力3:地域イベント記事をチェックする
次は、地域イベント記事です。
# サンプル入力3
## AIが生成した原稿
水都おおがき肉フェスは、2026年8月に大垣駅前で開催される大人気イベントです。全国から有名店が集まり、飛騨牛ステーキ、焼肉、からあげ、肉寿司などを楽しめます。毎年10万人以上が来場し、大垣市最大級のグルメイベントとして知られています。
会場では、家族向けのキッズエリアやステージイベントも用意されており、誰でも一日中楽しめます。大垣に来たら、必ず参加したいイベントです。
## 想定読者
大垣市周辺で、週末に楽しめる食イベントを探している人
## 公開媒体
地域イベント紹介記事
## 文章の目的
架空イベントの企画イメージを伝える
## 注意したい表現
・水都おおがき肉フェスは架空イベントとして扱う
・開催日時、会場、来場者数、出店店舗は断定しない
・実在情報と架空情報を分ける
・企画案として自然に見せる
## 文字数の目安
800字
この原稿では、架空イベントなのに実在するように断定しています。
| 問題のある表現 | 理由 |
|---|---|
| 2026年8月に大垣駅前で開催 | 未確認の開催日時・会場を断定している |
| 全国から有名店が集まり | 出店情報が未確認 |
| 毎年10万人以上が来場 | 架空イベントなのに実績を作っている |
| 大垣市最大級 | 根拠が必要 |
| 必ず参加したい | 誇張表現 |
このような原稿は、品質チェック工程で必ず修正します。
自分用にチェックリストを追加する
サンプルで動きを確認したら、自分の用途に合わせてチェック項目を追加します。
就活・エントリーシートの場合
このミニアプリを、エントリーシート文章のチェックに対応させてください。
追加するチェック項目:
・経歴や実績を盛っていないか
・本人が実際に行った行動が書かれているか
・抽象的な自己PRになっていないか
・応募先との接点が自然か
・過度に立派すぎる表現になっていないか
提案書の場合
このミニアプリを、顧客向け提案書のチェックに対応させてください。
追加するチェック項目:
・顧客の課題を決めつけていないか
・未確認の内容を断定していないか
・提案内容が実行可能か
・メリットだけでなく注意点もあるか
・顧客に見せても失礼のない表現か
精度が低いときの改善方法
品質チェックの出力が浅い場合は、次のように改善します。
| 症状 | 追加する指示 |
|---|---|
| 指摘が少ない | 問題点を最低5つ以上抽出してください。 |
| 修正版が変わりすぎる | 元の意味を大きく変えずに修正してください。 |
| 表現リスクを見逃す | 断定、誇張、不安訴求、効果保証に見える表現を重点的に確認してください。 |
| 事実確認が弱い | 数字、日付、価格、制度、固有名詞をすべて確認対象として抽出してください。 |
| 読みやすさの指摘が弱い | 一文の長さ、専門用語、重複、主語のわかりにくさを確認してください。 |
| 修正版が硬い | 初心者にも伝わる自然で丁寧な文章にしてください。 |
この節のまとめ
この節では、AIが生成した原稿をそのまま使わず、品質チェックと編集を行う方法を学びました。
前の節で作った「自動記事生成ワークフロー」は、記事の下書きを作る工程でした。
今回の節は、その下書きを安全に使える形へ近づける工程です。
flowchart TB
A[4-6 本文ドラフトを生成する] --> B[4-7 品質チェックを行う]
B --> C[事実確認が必要な箇所を出す]
C --> D[表現リスクを確認する]
D --> E[読みやすく編集する]
E --> F[人間が最終確認する]

AIの文章は、最初の完成品ではありません。
あくまで、たたき台です。
たたき台を確認し、危ない表現を直し、読者に合わせて整える。
この工程を入れることで、AI活用はかなり実務に近づきます。
次の節では、こうして整えた文章を、Google DocsやDriveに保存し、確認・共有しやすい形にする出力設計へ進みます。