AI活用概論

実践課題:自分専用の記事作成AIアプリを完成させる

この節で学ぶこと

ここまでの節では、Google Opalを使って、記事生成・要約・企画構築・品質チェック・Google Docs出力設計までを学んできました。

今回は、その総仕上げです。

自分の目的に合わせて、入力から記事生成、確認、出力まで行うAIミニアプリを完成させます。

ただし、ここで大切なことがあります。

Google Opalは、初心者がAIワークフローを学ぶ入口として非常に扱いやすいツールです。自然言語で作りたいアプリを説明すると、編集可能なワークフローを作成でき、作ったアプリをすぐに共有・公開できるとGoogle公式でも説明されています。

一方で、実務レベルでさらに精度・拡張性・モデル選択・外部連携を高めたい場合は、Difyやn8nのようなツールも検討します。Difyは、AIワークフロー、RAG、Agent、モデル管理などを組み合わせたオープンソースのLLMアプリ開発プラットフォームとして説明されています。

n8nは、AI機能と業務プロセス自動化を組み合わせたワークフロー自動化ツールで、外部ツールやAPIを接続して処理を組み立てられます。

この節では、まずGoogle Opalで完成形を作ります。

そのうえで、「プロはなぜDifyやn8nに進むのか」まで理解します。

まず、言葉を整理します

言葉意味
実践課題ここまで学んだ内容を使って、自分で完成物を作る課題
自分専用AIアプリ自分の目的や作業に合わせて作ったAIミニアプリ
入力AIに渡す材料。記事テーマ、読者、資料、文字数など
処理AIが行う作業。要約、構成作成、本文生成、品質確認など
出力最後に得られる成果物。記事、レポート、Docs用本文など
精度AIの出力が、目的に合っていて使いやすいかどうか
拡張性後から機能を追加しやすいかどうか
モデルAIの頭脳にあたる部分。文章生成、推論、要約などの性能に関わる
RAG外部資料を参照しながらAIに回答させる仕組み。検索拡張生成とも呼ばれる
API外部サービス同士をつなぐための仕組み
ノーコードプログラミングを書かずにアプリやワークフローを作る方法
ローコード少ないコードで、より細かく仕組みを作る方法

RAGは少し難しい言葉ですが、初心者向けに言えば「AIに自分の資料を読ませて、その資料に基づいて答えさせる仕組み」です。

たとえば、自分の過去記事、商品資料、授業メモ、議事録を参照しながら、AIに文章を作らせる場合に使います。

ここまでの流れを振り返る

この章では、次の流れで学んできました。

flowchart TB
    A[AI活用のゴールを変える] --> B[Google Opalの基本]
    B --> C[記事作成の全体設計]
    C --> D[フォルダ投入型ワークフロー]
    D --> E[要約・リライト・企画構築]
    E --> F[自動記事生成]
    F --> G[品質チェックと編集]
    G --> H[Docs・Drive出力設計]
    H --> I[定期生成ワークフロー]
    I --> J[AI企画会議アプリ]
    J --> K[プロンプト部品化]
    K --> L[自分専用AIアプリ完成]

今回の目的は、これまでの部品を1つのアプリにまとめることです。

今回作る完成形

今回作るのは、次のAIミニアプリです。

自分専用の記事作成AIアプリ

このアプリでは、次の流れを作ります。

flowchart TB
    A[記事テーマ・資料を入力] --> B[読者分析]
    B --> C[素材要約]
    C --> D[企画案作成]
    D --> E[記事構成作成]
    E --> F[本文生成]
    F --> G[品質チェック]
    G --> H[Google Docs用に整形]
    H --> I[ファイル名・保存先案を出力]
    I --> J[人間が最終確認]

つまり、これまで作ってきた要素を全部つなげます。

工程これまで学んだ内容
読者分析誰に向けて書くかを整理する
要約素材の要点を抜き出す
企画構築記事案や切り口を作る
構成作成H2・H3の見出しを作る
本文生成構成に沿って本文を書く
品質チェック事実確認、表現リスク、読みやすさを確認する
出力設計Google Docs用本文、ファイル名、保存先案を作る

Google Opalで作る完成プロンプト

Google Opalで新しいミニアプリを作成し、以下の指示を入力します。

自分専用の記事作成AIアプリを作ってください。

目的:
記事テーマや資料を入力すると、読者分析、素材要約、企画案作成、記事構成作成、本文生成、品質チェック、Google Docs用出力までを順番に行うAIミニアプリにします。

入力:
・記事テーマ
・参考資料
・想定読者
・記事の目的
・希望文字数
・文体
・必ず入れたい内容
・注意点
・出力形式
・保存先フォルダ名

処理:
1. 記事テーマを確認する
2. 想定読者を具体化する
3. 読者の悩みや知りたいことを整理する
4. 参考資料を要約する
5. 企画の切り口を複数出す
6. 最も適した記事企画案を選ぶ
7. H2、H3の形で記事構成を作る
8. 構成に沿って本文ドラフトを作る
9. 記事タイトル案を5つ作る
10. 事実確認が必要な箇所を抽出する
11. 誇張表現、断定表現、読みにくい箇所を抽出する
12. 修正方針を作る
13. 修正版の本文を作る
14. Google Docsに貼り付けやすい形に整える
15. ファイル名案と保存先フォルダ案を作る
16. 人間が最終確認すべき点を一覧化する

出力形式:
Markdown形式

出力項目:
# 自分専用の記事作成AIアプリ出力

## 1. 入力内容の整理
## 2. 想定読者
## 3. 読者の悩み・知りたいこと
## 4. 参考資料の要約
## 5. 企画の切り口
## 6. 採用する記事企画
## 7. 記事構成案
## 8. 本文ドラフト
## 9. タイトル案
## 10. 品質チェック結果
## 11. 修正版本文
## 12. Google Docs貼り付け用本文
## 13. ファイル名案
## 14. 保存先フォルダ案
## 15. 人間が最終確認すべき点
## 16. 次に行う作業

条件:
・参考資料にない情報を勝手に追加しない
・未確認情報は「要確認」と明記する
・数字、日付、価格、制度、固有名詞は確認対象にする
・初心者にもわかる言葉で書く
・専門用語には短い説明を添える
・誇張表現や効果保証に見える表現を避ける
・AIに丸投げする表現は避ける
・公開や提出は人間が最終判断する前提にする

サンプル入力1:地域食品ブランドの記事を作る

まずは、地域食品ブランドの記事作成を例にします。

# サンプル入力1

## 記事テーマ
季節限定の柚子ドレッシングを紹介する記事

## 参考資料
地域食品ブランドが、地元の柚子を使った季節限定ドレッシングを発売予定。
サラダだけでなく、焼き魚、蒸し鶏、冷しゃぶにも使える。
秋のギフトセットにも入れる予定。
発売日は未確認。
価格は未定。
商品写真はまだ撮影前。

## 想定読者
地域の食材や季節限定商品に関心がある30〜50代の人。
家族の食事やギフト選びにも関心がある人。

## 記事の目的
新商品の魅力を伝え、発売前から興味を持ってもらう。

## 希望文字数
1200字

## 文体
上品で親しみやすい。季節感が伝わる雰囲気。

## 必ず入れたい内容
・地元の柚子を使っていること
・サラダ以外にも使えること
・秋の季節限定であること
・ギフトにも向いていること

## 注意点
・発売日と価格は未確認として扱う
・商品写真はまだない前提で書く
・販売実績を勝手に作らない
・効果を誇張しない

## 出力形式
Google Docs用

## 保存先フォルダ名
商品企画 / 柚子ドレッシング / 記事ドラフト

この入力では、記事作成だけでなく、未確認情報の扱いまで確認できます。

サンプル入力2:授業レポートを作る

次は、学生向けのレポート作成に応用します。

# サンプル入力2

## 記事テーマ
生成AIを学習に活用する方法についての授業レポート

## 参考資料
授業では、生成AIを使って文章作成、要約、企画構築、品質チェックを行う方法を学んだ。
AIに一度で全部任せるのではなく、読者分析、構成作成、本文生成、確認のように工程を分けることが重要だと学んだ。
また、AIが作った文章をそのまま使うのではなく、人間が事実確認や表現確認を行う必要があると学んだ。

## 想定読者
授業担当の先生

## 記事の目的
授業で学んだ内容を整理し、自分の考えを含めたレポートにする。

## 希望文字数
1000字

## 文体
学生らしく、丁寧で自然な文体。

## 必ず入れたい内容
・AIを使うと作業の下準備がしやすくなること
・AIに丸投げしないこと
・人間の確認が必要なこと
・自分の考え

## 注意点
・AIが書いたような不自然な文章にしない
・感想だけで終わらせない
・事実と意見を分ける
・出典が必要な情報は要確認とする

## 出力形式
Google Docs用

## 保存先フォルダ名
授業レポート / AI活用 / 下書き

この例では、記事というより「レポート」に近い形になります。

ただし、ワークフローは同じです。

テーマを整理し、素材を要約し、構成を作り、本文を書き、品質チェックを行います。

サンプル入力3:エントリーシートの下書きを作る

次は、就職活動用です。

# サンプル入力3

## 記事テーマ
IT企業の企画職に応募するための自己PR文

## 参考資料
大学ではマーケティングとデータ分析を学んでいる。
カフェで接客アルバイトを2年間経験した。
新人スタッフが迷いやすい作業をメモにまとめた経験がある。
地域イベント運営サークルでは、来場者アンケートの作成と集計を担当した。
相手の困りごとを聞き、整理して、次の行動につなげることにやりがいを感じている。

## 想定読者
IT企業の採用担当者

## 記事の目的
本人の経験をもとに、企画職に応募するための自己PR文を作る。

## 希望文字数
400字

## 文体
誠実で自然。過度に立派に見せすぎない。

## 必ず入れたい内容
・接客アルバイトでの改善経験
・地域イベントでのアンケート作成経験
・相手の困りごとを整理する力
・企画職との接点

## 注意点
・経歴や実績を盛らない
・リーダー経験があるとは書かない
・売上向上など確認できない成果を断定しない
・本人が実際に行った行動を中心に書く

## 出力形式
Google Docs用

## 保存先フォルダ名
就職活動 / IT企業 / ES下書き

この入力では、「文章をよく見せる」よりも、「本人の経験を事実に沿って整理する」ことが重要です。

完成したアプリを評価する

ミニアプリができたら、次の観点で確認します。

評価項目確認内容
入力しやすいか初心者でも何を入れるか分かるか
工程が分かれているか読者分析、要約、構成、本文、品質確認が分かれているか
出力が使いやすいかGoogle Docsに貼り付けやすいか
未確認情報を扱えているか要確認と明記できているか
誇張を避けているか強すぎる表現が弱められているか
自分用に改造できるか記事、レポート、ESなどに応用できるか

評価するときは、単に「文章がきれいか」だけを見ないようにします。

AIミニアプリとして大切なのは、再利用できることです。

Opalの限界も理解する

ここまでGoogle Opalを使ってきましたが、実務で使い込むと限界も見えてきます。

Opalは、初心者がAIワークフローを体験し、AIミニアプリをすばやく作る入口として優れています。自然言語からワークフローを作れること、作成したアプリをすぐ共有できることが強みです。

一方で、より本格的な運用では、次のような課題が出る場合があります。

課題内容
モデル選択の自由度使いたいAIモデルを細かく選びたい場合、より柔軟な環境が必要になる
外部連携CRM、データベース、社内ツール、複数APIと連携したい場合は設計が複雑になる
RAG大量の社内資料や商品資料を参照して回答させたい場合、専用の知識管理が必要になる
ログ管理誰が何を実行したか、出力がどう変わったかを追いたい場合がある
権限管理チームや顧客ごとに閲覧・編集権限を細かく分けたい場合がある
例外処理エラー時に再実行、通知、別ルート処理などを入れたい場合がある
本番運用業務システムとして安定運用したい場合、監視や保守が必要になる

ここで、Difyやn8nが選択肢になります。

プロがDifyやn8nを使う理由

Difyは、複数のモデルプロバイダーをワークスペース単位で設定でき、LLMノードでは利用するモデルやパラメータを選択する設計が説明されています。

また、DifyはAIワークフロー、RAGパイプライン、Agent、モデル管理などを含むLLMアプリ開発プラットフォームとして紹介されています。

n8nは、業務プロセス自動化とAI機能を組み合わせられるワークフロー自動化ツールです。公式ドキュメントでは、AI Agent nodeが外部ツールやAPIを使って行動できること、ツールノードと接続して利用することが説明されています。

初心者向けに整理すると、次のようになります。

ツール向いている場面
Google OpalAIミニアプリの考え方を学ぶ。素早く試作する。共有して体験する
Dify複数モデル、RAG、Agent、チャットアプリ、ワークフローを本格的に作る
n8nGmail、Google Drive、Slack、Notion、DB、APIなど業務ツールをつなぐ自動化を作る

つまり、学習の順番としてはこうです。

flowchart TB
    A[Google Opalで考え方を学ぶ] --> B[プロンプトと工程を部品化する]
    B --> C[DifyでAIアプリとして高度化する]
    B --> D[n8nで外部ツールと自動連携する]
    C --> E[実務運用へ]
    D --> E[実務運用へ]

Opal・Dify・n8nの使い分け

観点Google OpalDifyn8n
学びやすさ高い中程度中程度
試作の速さ高い高い中程度
モデル選択限定される場合がある複数モデル管理に向く接続先次第
RAG本格運用には別設計が必要向いている外部DB連携で対応可能
外部ツール連携用途によるAPI・ツール連携可能強い
業務自動化軽めの試作向きAIアプリ運用向き自動化運用向き
初心者教材とても向く応用編向き応用編向き

ここで大切なのは、Opalが悪いという話ではありません。

Opalは入口として非常に良いです。

ただ、実務で「モデルを選びたい」「社内資料を検索したい」「Google DriveやSlackと細かく連携したい」「失敗時の処理を作りたい」となったとき、Difyやn8nを使うほうが自然になる場面があります。

実践課題:自分専用アプリを完成させる

ここから実際に作ります。

Step 1:用途を1つ選ぶ

次の中から1つ選びます。

用途作るアプリ
ブログ運用記事作成AIアプリ
授業レポート・教材作成AIアプリ
就職活動ES作成AIアプリ
顧客対応提案書作成AIアプリ
SNS運用投稿企画AIアプリ
商品販売商品紹介記事AIアプリ

Step 2:入力項目を決める

最低限、以下を入れます。

・テーマ
・参考資料
・想定読者
・目的
・文字数
・文体
・必ず入れたい内容
・注意点
・出力形式

用途別に追加するなら、次のようになります。

用途追加入力
ブログSEOキーワード、検索意図
レポート授業内容、自分の考え、出典
ES応募企業、職種、経験メモ
提案書顧客課題、提案方向性、未確認事項
SNS媒体、投稿枚数、画像イメージ
商品紹介商品情報、価格、販売状況、写真素材

Step 3:工程を並べる

Opal上では、次の工程を基本にします。

1. 入力確認
2. 読者分析
3. 素材要約
4. 企画案作成
5. 構成作成
6. 本文生成
7. 品質チェック
8. 修正版作成
9. Docs用出力
10. ファイル名・保存先案

この順番は、どの用途にも応用しやすいです。

Step 4:サンプルで実行する

最初から本番データを使わず、まず架空データで試します。

# 実行用サンプル

## テーマ
地域食品ブランドの新商品紹介記事

## 参考資料
地元の柚子を使った季節限定ドレッシングを発売予定。
サラダ、焼き魚、蒸し鶏に使える。
発売日と価格は未確認。
商品写真はまだない。

## 想定読者
季節感のある食品やギフトに関心がある人

## 目的
新商品の魅力を伝え、発売前から関心を持ってもらう

## 文字数
1000字

## 文体
丁寧で親しみやすい

## 必ず入れたい内容
地元の柚子、秋限定、料理への使い方、ギフト向き

## 注意点
発売日、価格、販売実績を断定しない

## 出力形式
Google Docs用

Step 5:出力を評価する

出力されたら、次の表で確認します。

確認項目OKか
入力内容が反映されている
読者が具体化されている
参考資料にない内容を追加していない
未確認情報を「要確認」としている
構成が自然
本文が読みやすい
品質チェックが出ている
Docs用本文が使いやすい
ファイル名案が管理しやすい

Step 6:限界を感じたら設計を分岐する

最後に、次の判断をします。

flowchart TB
    A[Opalで完成] --> B{実務で十分か}
    B -->|はい| C[Opalで運用を続ける]
    B -->|いいえ| D{何が足りないか}
    D -->|モデル選択・RAG| E[Difyを検討]
    D -->|外部ツール連携・自動化| F[n8nを検討]
    D -->|両方必要| G[Dify + n8n構成を検討]

目安は次の通りです。

不満次の選択
もっと高性能なモデルを選びたいDify
社内資料や過去記事を検索させたいDify
Google Driveの特定フォルダを監視したいn8n
SlackやGmailに自動通知したいn8n
顧客ごとに複雑な業務フローを作りたいn8n
AIアプリと業務自動化を両方作りたいDify + n8n

この節のまとめ

この節では、これまで学んだ内容を使って、自分専用の記事作成AIアプリを完成させました。

Google Opalは、AIワークフローを体験し、ミニアプリとして形にするにはとても向いています。

自然言語でアプリを作り、編集可能なワークフローとして確認でき、共有もしやすいため、初心者の学習には非常に相性が良いです。

ただし、プロとして実務運用まで考えるなら、Opalだけで完結させる必要はありません。

モデル選択、RAG、複雑な外部連携、ログ管理、例外処理、権限管理などが必要になったら、Difyやn8nを検討します。DifyはモデルプロバイダーやAIワークフロー、RAG、Agentなどを扱えるLLMアプリ開発プラットフォームとして説明されており、n8nはAIと業務プロセス自動化を組み合わせられるワークフロー自動化ツールとして説明されています。

学習としては、まずOpalで流れを理解します。

次に、DifyでAIアプリとして高度化します。

さらに、n8nで外部ツールや業務フローと接続します。

この順番で進むと、AI活用は「文章を作る練習」から「実務を動かす仕組みづくり」へ変わります。

参考文献

  • Google for Developers「Opal」
  • Google Developers Blog「Introducing Opal: describe, create, and share your AI mini-apps」
  • Dify Documentation「Introduction」
  • Dify Documentation「Model Providers」
  • n8n Docs「Welcome to n8n Docs」
  • n8n Docs「AI Agent node」
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