
【導入】“なんとなく勝てない”を分析テーマに変える
この授業の位置づけ
第2章では、eスポーツにおける「勝てない」「伸びない」「チームが噛み合わない」「配信が伸びない」といった悩みを、分析できるテーマに変えていきます。
まだMECE、ロジックツリー、KPIなどの細かい考え方には入りません。まずは、自分の中にあるモヤモヤを外に出し、授業で扱えるテーマに変換します。
この節で大切なのは、次の一文です。
“なんとなく勝てない”は、分析テーマに変えた瞬間から改善できる。
この節の到達目標
この節を終えると、次のことができるようになります。
- eスポーツにおける悩みを、言葉にして書き出せる
- 「勝てない」「伸びない」を、授業で扱える分析テーマに変換できる
- 自分・チーム・配信・大会のどこに課題がありそうかを考え始められる
- 次の 2-2 で扱う「問題」と「課題」の違いに自然につなげられる
今日のキーワード
今日のキーワードは、分析テーマです。
分析テーマとは、あとから原因を分けたり、仮説を立てたり、改善行動へつなげたりできる形にした問いのことです。
たとえば、次の違いを見てください。
悩み:
最近、勝てない。
分析テーマ:
最近、終盤の人数が少ない場面で負けることが多いのはなぜか。
「勝てない」だけだと広すぎます。
しかし、「終盤」「人数が少ない場面」「負けることが多い」と少し具体化すると、あとで分析しやすくなります。
1. eスポーツの悩みは、最初はだいたい曖昧である
eスポーツで伸び悩むとき、最初に出てくる言葉はかなり曖昧です。
よくある悩み:
- 勝てない
- ランクが上がらない
- 判断が悪い
- 立ち回りが弱い
- 味方と噛み合わない
- チーム練習の質が低い
- 大会になると実力が出ない
- 配信が伸びない
これらは悪い言葉ではありません。
むしろ、最初はこれで十分です。
ただし、このままだと次に何を見ればよいかが分かりません。
たとえば「判断が悪い」と言っても、かなり広いです。
「判断が悪い」の中身:
- 攻めるタイミングが早い
- 引く判断が遅い
- 人数不利なのに勝負している
- スキルを使うタイミングが遅い
- 味方の位置を見ずに動いている
つまり、最初の悩みは入口です。
そこから少しだけ具体化して、分析テーマに変えることが、この節のゴールです。
2. 分析テーマに変えるとは何か
分析テーマに変えるとは、悩みを「あとで分解できる問い」にすることです。
悩みのままの例
勝てない。
この言い方だと、広すぎて考えにくいです。
分析テーマにした例
終盤で人数が少なくなった場面になると、焦って前に出て負けることが多いのはなぜか。
こちらは、かなり考えやすくなっています。
なぜなら、場面が見えるからです。
- 終盤
- 人数が少ない場面
- 焦って前に出る
- 負けることが多い
このように分けられると、次に原因を考えられます。
変換の基本形
最初は、次の型を使うと簡単です。
悩み:
〇〇がうまくいかない。
分析テーマ:
どの場面で、何が起きて、なぜうまくいかないのか。
例です。
悩み:
ランクが上がらない。
分析テーマ:
ランク戦のどの場面で負けやすく、どの行動が結果に影響しているのか。
悩み:
配信が伸びない。
分析テーマ:
配信のどの場面で視聴者が離れ、何が見続ける理由になっていないのか。
3. 分析テーマは「自分を責める言葉」にしない
ここはかなり大切です。
分析テーマは、自分や味方を責めるための言葉ではありません。
次に変えられる行動を見つけるための言葉です。
責める言い方
自分は弱い。
味方が悪い。
チームが終わっている。
配信センスがない。
この言い方は、気持ちとして出ることはあります。
しかし、授業ではこのまま扱いません。
なぜなら、次に何を変えるかが見えにくいからです。
分析しやすい言い方
撃ち合いで負ける場面が多いのは、操作精度、立ち位置、敵情報のどれが影響しているのか。
味方と噛み合わない場面は、報告不足、役割分担、動き出しのタイミングのどれが関係しているのか。
配信が伸びないのは、タイトル、冒頭30秒、コメント対応、切り抜き導線のどこに原因がありそうか。
責める言葉ではなく、分けられる言葉にする。
これが分析の第一歩です。
4. eスポーツ課題を考える4つの入口
この章では、悩みを考える入口として、まず4つの方向を使います。
4-1. プレイの悩み
プレイそのものに関する悩みです。
例:
- 撃ち合いに勝てない
- コンボ精度が低い
- マップ理解が浅い
- 終盤で判断が崩れる
分析テーマにすると、こうなります。
撃ち合いで負ける場面は、操作精度、立ち位置、敵情報のどれに関係しているのか。
4-2. チームの悩み
チーム連携や練習に関する悩みです。
例:
- 味方と噛み合わない
- 報告が少ない
- 練習の質が上がらない
- ミスの指摘が感情的になる
分析テーマにすると、こうなります。
チーム練習の質が上がらないのは、目的設定、役割分担、振り返りのどこが弱いからか。
4-3. 大会の悩み
大会や本番環境に関する悩みです。
例:
- 大会になると実力が出ない
- 初戦で硬くなる
- ミスを引きずる
- 練習と本番で動きが変わる
分析テーマにすると、こうなります。
大会で実力が出ないのは、事前準備、本番環境、初戦の入り方、声かけルールのどれが影響しているのか。
4-4. 配信・発信の悩み
配信やSNS活動に関する悩みです。
例:
- 視聴者が増えない
- コメントが少ない
- 切り抜きが伸びない
- 配信を続けても反応が薄い
分析テーマにすると、こうなります。
配信の視聴者が増えないのは、タイトル、冒頭30秒、コメント対応、配信後の切り抜き導線のどこが弱いからか。
5. 実習1:自分の悩みを1つ書く
まずは、自分の悩みを1つ書いてください。
きれいに書かなくて大丈夫です。
ワークシート
自分の悩み:
____________________
それはどの入口に近いか:
□ プレイ
□ チーム
□ 大会
□ 配信・発信
記入例
自分の悩み:
終盤で負けることが多い。
それはどの入口に近いか:
□ プレイ
□ チーム
□ 大会
□ 配信・発信
近い入口:
プレイ / チーム
ここでは、複数選んでも構いません。
たとえば「終盤で負ける」は、個人の判断にも、チームの報告にも関係する可能性があります。
6. 実習2:悩みを少し具体化する
次に、その悩みがどんな場面で起きるかを書きます。
ワークシート
悩み:
____________________
いつ起きるか:
____________________
どんな場面で起きるか:
____________________
そのとき何が起きているか:
____________________
記入例
悩み:
終盤で負けることが多い。
いつ起きるか:
試合の終盤。
どんな場面で起きるか:
残り人数が少なくなった場面。
そのとき何が起きているか:
焦って前に出て、味方のカバーを受ける前に倒される。
ここまで書けると、「勝てない」よりかなり分析しやすい状態になっています。
7. 実習3:分析テーマに変換する
最後に、悩みを分析テーマに変換します。
変換テンプレート
悩み:
____________________
分析テーマ:
____の場面で、____が起きるのはなぜか。
または、次の形でも構いません。
分析テーマ:
____がうまくいかない原因は、____・____・____のどこにありそうか。
記入例1
悩み:
終盤で負けることが多い。
分析テーマ:
試合の終盤で人数が少なくなった場面になると、焦って前に出て倒されるのはなぜか。
記入例2
悩み:
配信の視聴者が増えない。
分析テーマ:
配信の視聴者が増えない原因は、タイトル・冒頭30秒・コメント対応・切り抜き導線のどこにありそうか。
記入例3
悩み:
チーム練習の質が上がらない。
分析テーマ:
チーム練習の質が上がらない原因は、練習目的・役割分担・振り返り・コミュニケーションのどこにありそうか。
8. ミニケース:悪いテーマと良いテーマを比べる
ケース1:プレイ
弱いテーマ:
強くなりたい。
良いテーマ:
撃ち合いで負ける場面は、エイム精度・立ち位置・敵情報のどれに原因がありそうか。
ケース2:チーム
弱いテーマ:
チームが弱い。
良いテーマ:
チーム練習で同じミスが続く原因は、練習目的・振り返り・役割分担のどこにありそうか。
ケース3:大会
弱いテーマ:
大会で勝てない。
良いテーマ:
大会の初戦で実力が出にくい原因は、事前準備・緊張・声かけ・初動の確認不足のどこにありそうか。
ケース4:配信
弱いテーマ:
配信が伸びない。
良いテーマ:
配信が伸びない原因は、タイトル・冒頭の見どころ・コメント対応・切り抜き投稿のどこにありそうか。
良いテーマに共通しているのは、あとで分解できる形になっていることです。
9. この節で作る成果物
この節の最後に、次の3つが書けていれば十分です。
1. 自分の悩み:
____________________
2. 悩みが起きる場面:
____________________
3. 分析テーマ:
____________________
完成例
1. 自分の悩み:
ランクが上がらない。
2. 悩みが起きる場面:
終盤で人数が少なくなった場面になると、焦って前に出て倒される。
3. 分析テーマ:
終盤で人数が少なくなった場面になると、焦って前に出て倒されるのはなぜか。
この完成物は、次の 2-2 でそのまま使います。
次回は、この分析テーマを「問題」と「課題」に分け、次に試すことへ変えていきます。
10. まとめ
この節では、“なんとなく勝てない”という曖昧な悩みを、分析テーマに変える方法を学びました。
大切なのは、次の3つです。
- 最初の悩みは曖昧でよい
- ただし、授業で扱うには場面を少し具体化する
- 責める言葉ではなく、分けられる言葉に変える
この節でのゴールは、完璧な分析ではありません。
自分の悩みを、次の授業で扱える形にすることです。
次の 2-2 では、この分析テーマを使って、問題と課題の違いを学びます。
「起きている困りごと」と「次に取り組むこと」を分けることで、改善行動へ進めるようになります。
練習問題
問題1
分析テーマとは何か、一文で説明してください。
問題2
次の悩みを、分析テーマに変換してください。
悩み:
ランクが上がらない。
問題3
次のうち、分析テーマとして扱いやすいものを選んでください。
A. 自分は弱い
B. もっと頑張る
C. 終盤で焦って前に出て倒されるのはなぜか
D. 味方が悪い
問題4
配信・発信に関する悩みを1つ書き、それを分析テーマに変えてください。
練習問題の答え
答え1
例です。
分析テーマとは、悩みをあとから原因分解や改善行動につなげられる形にした問いのことです。
答え2
例です。
分析テーマ:
ランク戦で負ける場面は、終盤の判断・撃ち合う位置・味方への報告のどこに原因がありそうか。
または、
分析テーマ:
ランクが上がらない原因は、個人スキル・戦術判断・練習方法・メンタル環境のどこにありそうか。
答え3
C です。
C. 終盤で焦って前に出て倒されるのはなぜか
理由は、場面と起きていることが具体的で、あとから原因を分けやすいからです。
答え4
例です。
悩み:
配信の視聴者が増えない。
分析テーマ:
配信の視聴者が増えない原因は、タイトル・冒頭30秒・コメント対応・切り抜き導線のどこにありそうか。