AI活用と意思決定デザイン

次章への接続:イベント改善フレームワークへ

この教材で扱うこと

これまでの授業では、目的、KGI、KPI、評価軸、定量指標、定性指標、AI活用、KPI表、評価マトリクスを学びました。

ここまでで、次のようなことができるようになっています。

学んだことできるようになったこと
目的とゴール何のために取り組むのかを説明できる
KGI・KPI成果と途中指標を数字で整理できる
評価軸複数の案を比べる基準を作れる
定量・定性数字と声の両方から状況を見られる
意思決定KPIを見て、次の一手を決められる
AI活用たたき台を作り、自分で修正できる
KPI表目的・指標・測定方法・改善策を一覧化できる
評価マトリクス3つの案を比べて、採用案を選べる

今回の授業では、この章のまとめとして、次章の「分析フレームワーク」へつなげます。

KPIを作るだけでは、まだ十分ではありません。

大切なのは、KPIの結果を見て、

なぜ、そうなったのか。
何が強みだったのか。
どこに弱点があったのか。
次回は何を変えるべきか。

を整理することです。

この「なぜ」を考えるために、次章では分析フレームワークを使います。

到達目標

到達目標内容
KPI設計と分析の違いを説明できるKPIは見る指標、分析は理由を考える作業だと理解できる
KPI結果から次章の問いを作れる数字を見て、次に調べるべきことを整理できる
改善フレームワークの必要性を理解できるSWOT分析、3C分析、カスタマージャーニーなどを使う理由が分かる
自分の専攻に置き換えられるeスポーツの成長改善、イベント改善の両方に応用できる
次章に向けた準備シートを作れる自分のKPI結果をもとに、分析テーマを設定できる

1. KPI設計の次に必要なこと

KPIを設計すると、見るべき数字が決まります。

しかし、数字を見るだけでは、改善は完成しません。

たとえば、eスポーツ専攻の学生が次のようなKPIを設定したとします。

KPI目標実績
週間勝率55%47%
リプレイ分析回数週3回週1回
苦手マップ勝率50%31%
終盤の単独デス回数1試合2回以内1試合5回
ショート動画投稿数週5本週5本

この表を見ると、勝率や苦手マップ、終盤の判断に課題があることは分かります。

しかし、まだ十分ではありません。

次に考えるべきことは、

なぜ勝率が低いのか。
なぜ苦手マップで負けるのか。
なぜ終盤に単独デスが増えるのか。
なぜ動画投稿はできているのに成果につながらないのか。

です。

イベントマネジメント専攻でも同じです。

KPI目標実績
来場者数300人260人
満足度4.0以上3.4
受付待ち時間10分以内22分
SNS投稿数100件35件
売上20万円18万円

この表を見ると、満足度、待ち時間、SNS投稿数に課題があることは分かります。

しかし、次に必要なのは、

なぜ満足度が低かったのか。
なぜ受付待ち時間が長くなったのか。
なぜSNS投稿が少なかったのか。
なぜ売上が目標に届かなかったのか。

を考えることです。

この「なぜ」を整理するために、分析フレームワークを使います。

2. KPI設計と分析フレームワークの違い

KPI設計と分析フレームワークは、役割が違います。

項目役割
KPI設計何を見るかを決める
分析フレームワークなぜそうなったかを整理する
改善計画次に何を変えるかを決める

つまり、流れは次のようになります。

flowchart TB
A[目的を決める] --> B[KGIを決める]
B --> C[KPIを設計する]
C --> D[結果を見る]
D --> E[分析フレームワークで理由を整理する]
E --> F[改善策を決める]
F --> G[次回のKPIに反映する]

KPIは、車でいうメーターのようなものです。

スピードが出ているか。

燃料が足りているか。

エンジンに異常がないか。

そうした状態を確認できます。

一方で、分析フレームワークは、なぜその状態になったのかを調べるための考え方です。

燃料が減るのが早いなら、運転の仕方が悪いのか、車体が重いのか、道が悪いのかを考える必要があります。

イベントやeスポーツでも同じです。

数字を見るだけではなく、数字の背景を分析します。

3. 次章で扱う分析フレームワーク

次章では、イベント改善やeスポーツの成長改善に使える分析フレームワークを扱います。

主に、次のような考え方を使います。

フレームワーク何を整理するかeスポーツでの使い方イベントでの使い方
SWOT分析強み・弱み・機会・脅威自分の得意・苦手、競技環境を整理するイベントの強み・課題・外部環境を整理する
3C分析自分・相手・環境自分、対戦相手、競技環境を比較する主催者、参加者、競合イベントを比較する
カスタマージャーニー体験の流れ練習前・試合中・試合後の行動を整理する参加前・当日・参加後の体験を整理する
PDCA計画・実行・確認・改善練習計画を改善するイベント運営を改善する
ロジックツリー原因を分解する負けた原因を細かく分ける集客不足や満足度低下の原因を分ける

これらは、難しい言葉に見えるかもしれません。

しかし、目的はシンプルです。

問題を見つける。
原因を分ける。
改善策を決める。
次回に活かす。

そのための道具が、分析フレームワークです。

4. eスポーツ専攻での接続例

例1:勝率が上がらない場合

KPI結果

KPI目標実績
週間勝率55%46%
苦手マップ勝率50%30%
リプレイ分析回数週3回週1回
終盤の単独デス回数1試合2回以内1試合5回

この結果から、次章では原因を分析します。

ロジックツリーで考える例

flowchart TB
A[勝率が上がらない] --> B[操作技術の問題]
A --> C[判断力の問題]
A --> D[練習方法の問題]
A --> E[メンタル・体調の問題]

B --> B1[命中率が低い]
B --> B2[キャラ操作が不安定]

C --> C1[終盤で焦る]
C --> C2[味方とタイミングが合わない]

D --> D1[リプレイ分析が少ない]
D --> D2[苦手マップを避けている]

E --> E1[睡眠不足]
E --> E2[連敗後に集中が切れる]

このように原因を分けると、「勝率が低いからもっと練習する」ではなく、どこを改善すべきかが見えてきます。

改善の方向

原因改善策
苦手マップを避けている苦手マップだけを週2回練習する
終盤で焦る終盤3分だけリプレイ分析する
分析が少ない週2回、負け試合を1本だけ見返す
連敗後に集中が切れる3連敗したら10分休憩する

例2:配信やSNSが伸びない場合

KPI結果

KPI目標実績
ショート動画投稿数週5本週5本
平均再生回数1,000回250回
視聴維持率50%18%
プロフィールアクセス数週100件15件

この場合、投稿本数は達成しています。

しかし、再生回数や視聴維持率が低いため、動画の中身や見せ方に課題がある可能性があります。

3C分析で考える例

視点考えること
自分どんなプレイやキャラクターが強みか
視聴者どんな動画を見たいのか
競合伸びているプレイヤーはどんな動画を出しているか

改善の方向

原因改善策
冒頭で離脱されている最初の1秒に見どころを入れる
誰向けの動画か分かりにくい初心者向け、上級者向けなどを明確にする
プロフィールに飛ばない動画内で次の行動を促す
投稿内容が毎回似ている解説系、失敗系、神プレイ系を比較する

5. イベントマネジメント専攻での接続例

例1:来場者数が目標に届かなかった場合

KPI結果

KPI目標実績
告知投稿閲覧数5,000回4,800回
申込ページアクセス数800回150回
事前申込数100人38人
当日来場者数300人180人

この場合、告知投稿はある程度見られています。

しかし、申込ページへのアクセスと事前申込が少ないため、「見た人が申し込む理由」が弱かった可能性があります。

ロジックツリーで考える例

flowchart TB
A[来場者数が少ない] --> B[告知が届いていない]
A --> C[イベントの魅力が伝わっていない]
A --> D[申込導線が弱い]
A --> E[参加ハードルが高い]

B --> B1[投稿回数が少ない]
B --> B2[対象者が使う媒体に出していない]

C --> C1[何ができるイベントか分からない]
C --> C2[参加するメリットが弱い]

D --> D1[申込リンクが目立たない]
D --> D2[申込フォームが長い]

E --> E1[時間帯が合わない]
E --> E2[会場が行きにくい]

改善の方向

原因改善策
魅力が伝わっていない体験内容が一目で分かる画像に変える
申込導線が弱い投稿内に申込方法を大きく表示する
参加メリットが弱い事前申込特典を用意する
対象者に届いていない学校、店舗、LINE、Instagramなど媒体を分ける

例2:満足度が低かった場合

KPI結果

KPI目標実績
来場者数300人320人
受付待ち時間10分以内25分
滞在時間60分35分
満足度4.0以上3.2

来場者数は達成しています。

しかし、満足度が低く、受付待ち時間が長く、滞在時間が短い状態です。

カスタマージャーニーで考える例

体験の段階参加者の行動起きていた課題
参加前SNSでイベントを知る内容は分かるが、当日の流れが分かりにくい
来場時会場に到着する受付場所が分かりにくい
受付列に並ぶ待ち時間が長い
体験中ブースを回る混雑して体験できない
参加後感想を書く投稿する場所やハッシュタグが分からない

このように、参加者の行動の流れで見ると、どこで体験が悪くなったのかが分かります。

改善の方向

課題改善策
受付場所が分かりにくい入口に案内看板を置く
待ち時間が長いQR受付と事前受付を導入する
体験ブースが混雑するブース配置を分散する
投稿導線が弱いハッシュタグ案内とフォトスポットを設置する

6. KPI結果から分析テーマを作る

次章に進むためには、KPI結果から「分析テーマ」を作る必要があります。

分析テーマとは、次に深掘りする問いのことです。

eスポーツ専攻の例

KPI結果分析テーマ
勝率が目標より低いなぜ勝率が上がらないのか
苦手マップ勝率が低いなぜ特定のマップで負けるのか
リプレイ分析回数が少ないなぜ振り返りを継続できないのか
配信の視聴維持率が低いなぜ視聴者が途中で離脱するのか
チーム練習で連携ミスが多いなぜ味方との連携が崩れるのか

イベントマネジメント専攻の例

KPI結果分析テーマ
申込者数が少ないなぜ告知から申込につながらないのか
来場者数が少ないなぜ当日来場までつながらなかったのか
満足度が低いなぜ参加者体験が悪くなったのか
SNS投稿数が少ないなぜ参加者が投稿しなかったのか
売上が低いなぜ購入につながらなかったのか

分析テーマは、次章のスタート地点になります。

実習1:これまで作ったKPIを振り返る

自分がこれまで作成したKPI表を見返してください。

eスポーツ専攻用

項目記入内容
競技タイトル
KGI
KPI 1
KPI 2
KPI 3
KPI 4
KPI 5

イベントマネジメント専攻用

項目記入内容
イベント名
KGI
KPI 1
KPI 2
KPI 3
KPI 4
KPI 5

実習2:KPI結果を仮で入力する

まだ実際の結果がない場合は、仮の結果を入れてください。

記入欄

KPI目標仮の結果状態
1.達成 / 未達
2.達成 / 未達
3.達成 / 未達
4.達成 / 未達
5.達成 / 未達

記入例:eスポーツ

KPI目標仮の結果状態
週間勝率55%47%未達
リプレイ分析回数週3回週1回未達
苦手マップ勝率50%31%未達
ショート動画投稿数週5本週5本達成
視聴維持率50%18%未達

記入例:イベント

KPI目標仮の結果状態
来場者数300人260人未達
満足度4.03.4未達
受付待ち時間10分以内22分未達
SNS投稿数100件35件未達
売上20万円18万円未達

実習3:分析テーマを作る

KPI結果をもとに、次章で深掘りする分析テーマを作ります。

記入欄

KPI結果分析テーマ
なぜ____________________なのか
なぜ____________________なのか
なぜ____________________なのか

eスポーツ専攻の記入例

KPI結果分析テーマ
苦手マップ勝率が31%だったなぜ苦手マップで勝率が下がるのか
リプレイ分析が週1回しかできなかったなぜ振り返りを継続できないのか
視聴維持率が18%だったなぜ視聴者が動画を途中で離脱するのか

イベントマネジメント専攻の記入例

KPI結果分析テーマ
申込ページアクセス数が少なかったなぜ告知を見た人が申込ページに移動しなかったのか
満足度が3.4だったなぜ参加者満足度が目標に届かなかったのか
SNS投稿数が35件だったなぜ参加者がSNSに投稿しなかったのか

実習4:使う分析フレームワークを選ぶ

分析テーマに合わせて、次章で使うフレームワークを選びます。

分析テーマの種類向いているフレームワーク
原因を細かく分けたいロジックツリー
強み・弱みを整理したいSWOT分析
自分・相手・環境を比較したい3C分析
体験の流れを見たいカスタマージャーニー
改善サイクルを回したいPDCA

記入欄

分析テーマ使いたいフレームワーク選んだ理由

記入例

分析テーマ使いたいフレームワーク選んだ理由
なぜ苦手マップで勝率が下がるのかロジックツリー負ける原因を操作・判断・知識に分けて考えたいから
なぜ参加者満足度が低かったのかカスタマージャーニー参加前から参加後までの体験の流れを確認したいから

実習5:次章への準備シートを完成させる

eスポーツ専攻用:次章準備シート

項目内容
競技タイトル
KGI
最も気になるKPI結果
分析テーマ
使いたいフレームワーク
分析したい理由
次回までに集める情報

イベントマネジメント専攻用:次章準備シート

項目内容
イベント名
KGI
最も気になるKPI結果
分析テーマ
使いたいフレームワーク
分析したい理由
次回までに集める情報

実習6:AIで分析テーマを作る

AIを使うと、KPI結果から分析テーマを作ることができます。

ただし、AIが作った問いをそのまま使うのではなく、自分が本当に知りたいことに直します。

eスポーツ専攻用プロンプト

私はプロゲーマーを目指している専門学生です。
以下のKPI結果をもとに、次章で分析すべきテーマを3つ提案してください。
それぞれについて、向いている分析フレームワークと、なぜそのフレームワークが合うのかも表で整理してください。

競技タイトル:
KGI:
KPI結果:
最近の課題感:
得意なこと:
苦手なこと:

イベントマネジメント専攻用プロンプト

私はイベントマネジメントを学ぶ専門学生です。
以下のKPI結果をもとに、次章で分析すべきテーマを3つ提案してください。
それぞれについて、向いている分析フレームワークと、なぜそのフレームワークが合うのかも表で整理してください。

イベント名:
イベントの目的:
KGI:
KPI結果:
参加者の声:
運営側の気づき:

実習7:AIの提案を修正する

AIが出した分析テーマを確認し、自分の状況に合うように修正してください。

確認すること

確認項目内容
自分の課題に合っているか表面的な問いになっていないか
KPI結果とつながっているか数字から生まれた問いになっているか
次章で分析できるかフレームワークに落とし込める問いか
改善につながるか分析後に行動を変えられるか
具体的か「もっと良くする」ではなく、何を深掘りするか明確か

修正欄

AIが出した分析テーマ違和感・問題点修正後の分析テーマ

まとめ

この章では、KPI設計の基礎を学びました。

KPIは、数字をきれいに並べるためのものではありません。

目的を決める。

KGIを決める。

KPIを作る。

評価軸で比較する。

定量と定性を使い分ける。

AIでたたき台を作る。

KPI表に整理する。

評価マトリクスで案を選ぶ。

そして、次章で分析する問いを作る。

この流れによって、eスポーツ専攻の学生は、プロゲーマーを目指すための努力を見える化できます。

イベントマネジメント専攻の学生は、イベントを「なんとなく成功した」ではなく、改善できる企画として扱えるようになります。

次章では、今回作ったKPI結果や分析テーマをもとに、分析フレームワークを使って原因を整理します。

数字を見るだけで終わらせず、理由を考える。

理由を考えるだけで終わらせず、次の行動に変える。

ここから、イベント改善と成長改善の本番に入ります。

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