AI活用と意思決定デザイン

演習:3つの企画案を評価マトリクスで比較する

この教材で扱うこと

これまでの授業では、目的、KGI、KPI、評価軸、定量指標、定性指標、AIを使った指標設計、KPI表の作成まで学んできました。

今回は、複数の案を比較して、どの案を採用するかを決める演習を行います。

eスポーツ専攻の学生は、プロゲーマーを目指すために、複数の練習案・発信案・大会準備案を比較します。

イベントマネジメント専攻の学生は、複数のイベント企画案を比較し、どの案を実施するべきか判断します。

大切なのは、「なんとなく良さそう」で選ばないことです。

評価軸を決め、点数をつけ、理由を書き、最後に自分の言葉で採用理由を説明できるようにします。

到達目標

到達目標内容
3つの案を比較できる複数の案を同じ評価軸で比べられる
評価マトリクスを作成できる表を使って、各案の強み・弱みを見える化できる
点数の理由を説明できるなぜその点数にしたのかを言葉で説明できる
採用案を決められる目的・KGIに合った案を選べる
AIを使って比較表を改善できるAIで評価表のたたき台を作り、自分で修正できる

1. 評価マトリクスとは何か

評価マトリクスとは、複数の案を同じ評価軸で比較するための表です。

「マトリクス」とは、縦と横で情報を整理する表のことです。

今回の場合は、縦に企画案や行動案を並べ、横に評価軸を並べます。

基本形

評価軸1評価軸2評価軸3評価軸4評価軸5合計
A案
B案
C案

この表に点数を入れることで、各案の特徴が見えます。

2. なぜ評価マトリクスが必要なのか

企画や行動を選ぶとき、人はつい感覚で選びがちです。

たとえば、eスポーツ専攻の学生なら、

ランクマッチをたくさん回した方が強くなりそう。
配信を頑張った方が有名になれそう。
大会に出た方が実績になりそう。

と考えるかもしれません。

イベントマネジメント専攻の学生なら、

ステージイベントは派手で良さそう。
フードイベントは人が集まりそう。
SNS企画は今っぽくて拡散しそう。

と考えるかもしれません。

この感覚は悪くありません。

ただし、実際に選ぶときには、目的に合っているか、実行できるか、成果につながるかを確認する必要があります。

評価マトリクスを使うと、次のような判断がしやすくなります。

判断したいこと評価マトリクスで見えること
どの案が目的に合っているか評価軸ごとの点数で分かる
どの案が実行しやすいか運営負荷・継続性などで比較できる
どの案にリスクがあるか安全性・負担・現実性で見える
どの案を採用するべきか点数と理由をもとに説明できる

3. 評価マトリクスの作り方

評価マトリクスは、次の順番で作ります。

flowchart TB
A[目的を確認する] --> B[KGIを確認する]
B --> C[比較する3案を出す]
C --> D[評価軸を5つ決める]
D --> E[5点満点で点数をつける]
E --> F[点数の理由を書く]
F --> G[採用案を決める]

手順1:目的を確認する

まず、何のために案を比較するのかを確認します。

eスポーツ専攻の例

プロゲーマーを目指すために、3か月以内にランクを上げ、校外大会に出場できる実力をつける。

イベントマネジメント専攻の例

地域の飲食店を知ってもらうために、駅前で参加しやすく、SNSでも広がるイベントを開催する。

目的が曖昧なままだと、評価軸もぶれます。

手順2:KGIを確認する

次に、最終的に達成したい成果を確認します。

eスポーツ専攻の例

項目内容
目的プロゲーマーを目指すために実力を上げる
KGI3か月以内に上位ランクへ到達する

イベントマネジメント専攻の例

項目内容
目的地域の飲食店を知ってもらう
KGI来場者300人、SNS投稿100件、満足度4.0以上を達成する

評価マトリクスでは、このKGIに近づきやすい案を選びます。

手順3:比較する3案を出す

次に、比較する案を3つ出します。

3案にする理由は、初心者でも扱いやすく、比較しやすいからです。

eスポーツ専攻の例

内容
A案ランクマッチを毎日多く回す
B案リプレイ分析と弱点練習を増やす
C案スクリム・大会参加を増やす

イベントマネジメント専攻の例

内容
A案ステージイベント中心
B案体験ブース中心
C案フード・SNS投稿企画中心

手順4:評価軸を5つ決める

評価軸は、案を比べるための基準です。

今回は、5つに絞ります。

多すぎると、点数をつけるのが難しくなるためです。

eスポーツ専攻で使いやすい評価軸

評価軸見ること
実力向上勝率・判断力・操作精度が伸びるか
弱点改善自分の苦手を直せるか
大会実績への近さ大会やトライアウトに活かせるか
継続しやすさ無理なく続けられるか
発信・認知配信やSNSで見つけてもらえるか

イベントマネジメント専攻で使いやすい評価軸

評価軸見ること
集客力人が集まりそうか
体験価値参加者が楽しめるか
運営しやすさ人数・準備・当日進行に無理がないか
収益性売上や協賛につながるか
SNS拡散性写真・動画・投稿が生まれやすいか

手順5:5点満点で点数をつける

各案を、評価軸ごとに5点満点で評価します。

点数意味
5とても良い
4良い
3普通
2やや弱い
1弱い

点数は、正解が1つに決まるものではありません。

ただし、点数をつけた理由を説明できることが大切です。


4. eスポーツ専攻の完成例

前提

項目内容
目的プロゲーマーを目指すために、3か月以内に実力を上げる
KGI3か月以内に上位ランクへ到達する
比較する案ランクマッチ重視、リプレイ分析重視、スクリム・大会重視

評価マトリクス

実力向上弱点改善大会実績への近さ継続しやすさ発信・認知合計
A案:ランクマッチ重視4234215
B案:リプレイ分析重視4533217
C案:スクリム・大会重視5452319

読み取り

A案は、継続しやすく、試合経験を積みやすいです。

しかし、弱点改善や大会実績への近さはやや弱くなります。

B案は、自分の負け方や判断ミスを見つけやすく、弱点改善に強い案です。

ただし、分析が苦手な学生にとっては、継続しにくい可能性があります。

C案は、大会に近い環境で練習できるため、実力向上と大会実績への近さが高いです。

一方で、チームや練習相手が必要になるため、継続しやすさは低めです。

採用案の例

採用する案は、C案:スクリム・大会重視です。
理由は、KGIが「上位ランク到達」と「大会に出られる実力をつけること」に近いためです。
ただし、継続しやすさに不安があるため、週1回のスクリム参加から始め、残りの日はリプレイ分析を組み合わせます。

このように、合計点が高い案を選ぶだけでなく、不安な点も補う形で意思決定します。

5. イベントマネジメント専攻の完成例

前提

項目内容
目的地域の飲食店を知ってもらい、駅前に人の流れを作る
KGI来場者300人、SNS投稿100件、満足度4.0以上
比較する案ステージ中心、体験ブース中心、フード・SNS投稿中心

評価マトリクス

集客力体験価値運営しやすさ収益性SNS拡散性合計
A案:ステージ中心4322314
B案:体験ブース中心3533418
C案:フード・SNS投稿中心5435522

読み取り

A案は、見た目が華やかで集客力はあります。

ただし、ステージ運営には音響、進行、出演者管理が必要になり、運営負荷が高くなります。

B案は、参加者の体験価値が高く、満足度につながりやすい案です。

一方で、集客の強さや収益性は、企画内容によって左右されます。

C案は、フードという分かりやすい魅力があり、SNS投稿にもつながりやすい案です。

売上や出店者メリットも作りやすいため、今回のKGIに合っています。

採用案の例

採用する案は、C案:フード・SNS投稿中心です。
理由は、来場者300人、SNS投稿100件、満足度4.0以上というKGIに最もつながりやすいからです。
ただし、当日の混雑や行列が発生しやすいため、受付導線、列整理、フォトスポットの位置を事前に設計します。

6. 点数をつけるときの注意点

6-1. 好き嫌いだけで点数をつけない

評価マトリクスは、自分の好みを表にするものではありません。

目的とKGIに対して、どれくらい合っているかを見ます。

悪い例:

自分はステージイベントが好きだから5点。
リプレイ分析は面倒だから1点。

良い例:

ステージイベントは集客力があるため4点。
ただし、運営人数が少ないため運営しやすさは2点。
リプレイ分析は面倒だが、弱点改善につながるため5点。

6-2. 合計点だけで決めない

合計点は参考になります。

しかし、合計点だけで自動的に決めるのは危険です。

たとえば、合計点が高くても、予算や人数が足りなければ実施できません。

逆に、合計点が少し低くても、目的に最も合う案なら採用する価値があります。

見るべきなのは、次の3つです。

見ること内容
合計点全体として強い案か
目的との一致今回の目的に合っているか
実行可能性現実にできる案か

6-3. 弱い点を補う方法も考える

選んだ案にも、必ず弱点があります。

大切なのは、弱点があるからやめることではありません。

弱点をどう補うか考えることです。

eスポーツの例

採用案弱点補う方法
スクリム重視継続しにくい週1回から始める
リプレイ分析重視飽きやすい1回10分だけにする
配信重視実力向上に直結しにくい練習日と発信日を分ける

イベントの例

採用案弱点補う方法
フードイベント行列ができやすい列整理と事前予約を入れる
ステージイベント運営負荷が高い進行台本と担当表を作る
体験ブース集客が弱い可能性SNS告知と予約制を組み合わせる

実習1:比較する3案を決める

自分の専攻に合わせて、比較する3案を決めてください。

eスポーツ専攻用

項目記入内容
競技タイトル
自分のKGI
A案
B案
C案

内容
A案ランクマッチを毎日多く回す
B案リプレイ分析と弱点練習を増やす
C案スクリム・大会参加を増やす

イベントマネジメント専攻用

項目記入内容
イベント名
自分のKGI
A案
B案
C案

内容
A案ステージイベント中心
B案体験ブース中心
C案フード・SNS投稿中心

実習2:評価軸を5つ決める

比較に使う評価軸を5つ選んでください。

eスポーツ専攻用

評価軸候補選ぶ場合は○
実力向上
弱点改善
大会実績への近さ
継続しやすさ
発信・認知
チーム連携
メンタル・体調への負担
トライアウトに活かせるか

イベントマネジメント専攻用

評価軸候補選ぶ場合は○
集客力
体験価値
運営しやすさ
収益性
SNS拡散性
安全性
協賛企業への価値
目的との一致

実習3:評価マトリクスを作る

3案を5点満点で評価してください。

eスポーツ専攻用

評価軸1評価軸2評価軸3評価軸4評価軸5合計
A案
B案
C案

イベントマネジメント専攻用

評価軸1評価軸2評価軸3評価軸4評価軸5合計
A案
B案
C案

実習4:点数の理由を書く

点数をつけたら、理由を書きます。

記入欄

高く評価した点低く評価した点
A案
B案
C案

eスポーツ専攻の記入例

高く評価した点低く評価した点
A案:ランクマッチ重視試合経験を多く積める弱点を意識しないと同じミスを繰り返す
B案:リプレイ分析重視負けた理由を見つけやすいすぐに楽しい成果を感じにくい
C案:スクリム・大会重視本番に近い経験ができるチームや相手の予定に左右される

イベントマネジメント専攻の記入例

高く評価した点低く評価した点
A案:ステージ中心見た目が華やかで注目されやすい出演者管理や進行が難しい
B案:体験ブース中心満足度につながりやすい集客には別の告知施策が必要
C案:フード・SNS投稿中心集客・売上・拡散につながりやすい混雑や行列の管理が必要

実習5:採用案を決める

評価マトリクスを見て、採用する案を決めてください。

記入欄

項目記入内容
採用する案
採用する理由
KGIとのつながり
不安な点
不安を補う方法

文章の型

採用する案は、____です。
理由は、____というKGIに最もつながりやすいからです。
一方で、____という不安があります。
そのため、____を行い、不安を補います。

記入例

採用する案は、C案:フード・SNS投稿中心です。
理由は、来場者300人、SNS投稿100件、満足度4.0以上というKGIに最もつながりやすいからです。
一方で、当日の混雑や行列が発生しやすいという不安があります。
そのため、事前予約、列整理、フォトスポットの配置を事前に設計し、不安を補います。

実習6:AIで評価マトリクスのたたき台を作る

AIを使って、評価軸と評価マトリクスのたたき台を作成します。

eスポーツ専攻用プロンプト

私はプロゲーマーを目指している専門学生です。
3つの行動案を比較して、どれを優先するべきか決めたいです。

以下の条件をもとに、評価軸を5つ作り、3つの案を5点満点で比較する評価マトリクスを作成してください。
点数の理由と、最終的に採用すべき案も説明してください。

競技タイトル:
現在の実力・ランク:
KGI:
比較する案:
A案:
B案:
C案:
練習できる時間:
苦手なこと:

イベントマネジメント専攻用プロンプト

私はイベントマネジメントを学ぶ専門学生です。
3つのイベント企画案を比較して、どれを採用するべきか決めたいです。

以下の条件をもとに、評価軸を5つ作り、3つの案を5点満点で比較する評価マトリクスを作成してください。
点数の理由と、最終的に採用すべき案も説明してください。

イベント名:
イベントの目的:
KGI:
対象者:
会場:
運営人数:
予算:
比較する案:
A案:
B案:
C案:

実習7:AIの評価を修正する

AIが作った評価マトリクスを見て、自分の状況に合わせて修正してください。

確認すること

確認項目内容
評価軸が目的に合っているかKGIに近づく判断基準になっているか
点数が納得できるかなぜその点数なのか説明できるか
現実的か時間・人数・予算・実力に合っているか
弱点が見えているか採用案の不安点も書かれているか
自分の判断が入っているかAIの案を丸写ししていないか

修正欄

AIが出した内容違和感・問題点修正後

実習8:評価マトリクスシートを完成させる

eスポーツ専攻用:評価マトリクスシート

項目内容
競技タイトル
現在の実力・ランク
KGI
A案
B案
C案
使用した評価軸
最も合計点が高かった案
採用する案
採用理由
不安な点
不安を補う方法
明日から行うこと

イベントマネジメント専攻用:評価マトリクスシート

項目内容
イベント名
イベントの目的
KGI
A案
B案
C案
使用した評価軸
最も合計点が高かった案
採用する案
採用理由
不安な点
不安を補う方法
次に確認すること

授業のまとめ

評価マトリクスは、複数の案を比べて選ぶための表です。

eスポーツ専攻の学生にとっては、プロゲーマーを目指すために、どの練習・分析・大会参加・発信活動を優先するか決める道具になります。

イベントマネジメント専攻の学生にとっては、複数のイベント企画案を比べて、どの案を実施するか決める道具になります。

大切なのは、合計点だけで決めないことです。

目的に合っているか。

KGIに近づくか。

現実に実行できるか。

弱点を補えるか。

この4つを考えながら、最終的な採用案を決めます。

評価マトリクスを使うことで、「なんとなく良さそう」ではなく、「この理由で選びました」と説明できるようになります。

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