AI活用と意思決定デザイン

実践:eスポーツ大会・イベントのKPI表をつくる

この節で扱うこと

これまでの授業では、KGI、KPI、評価軸、定量指標、定性指標、AIを使った指標設計の考え方を学びました。

今回は、それらを使って、実際にKPI表を作成します。

ここまで学んだ内容は、知識として覚えるだけでは意味がありません。

自分の目標や企画に当てはめて、使える形にすることが大切です。

eスポーツ専攻の学生は、プロゲーマーを目指すための「自分自身の成長KPI表」または「大会参加に向けた準備KPI表」を作成します。

イベントマネジメント専攻の学生は、実際に企画するイベントを想定して、「イベント運営KPI表」を作成します。

この授業では、最終的に1枚のKPI表を完成させます。

到達目標

到達目標内容
KPI表の役割を説明できる目的・KGI・KPI・測定方法・改善策を一覧で整理する意味を理解できる
自分のテーマを決められるeスポーツの成長目標、またはイベント企画を具体化できる
KPIを5つ設計できるKGI達成に向けて、途中で確認する指標を作れる
測定方法を決められるKPIをどのように記録・確認するか決められる
改善策を考えられる数字が悪かった場合に、次に何を変えるか考えられる
AIを使って表を整えられる自分の案をもとに、KPI表のたたき台や修正版を作れる

1. KPI表とは何か

KPI表とは、目標達成に向けて確認する指標を一覧で整理した表です。

KPI表には、主に次の内容を入れます。

項目意味
目的何のために取り組むのか
KGI最終的に達成したい成果
KPI途中で確認する指標
測定方法どうやって数字や情報を確認するか
目標値どれくらい達成したいか
改善策数字が悪かった場合に何を変えるか

KPI表を作ると、やるべきことが見えやすくなります。

ただ「強くなりたい」「イベントを成功させたい」と考えるだけでは、次に何をすればよいか分かりにくいです。

KPI表にすると、

何を目指すのか
何を確認するのか
どの数字を見るのか
悪かったら何を変えるのか

が整理されます。

2. eスポーツ専攻にとってのKPI表

eスポーツ専攻の学生にとって、KPI表は「プロゲーマーを目指すための成長管理表」です。

プロゲーマーを目指す場合、ただ長時間ゲームをするだけでは足りません。

もちろん練習時間は必要です。

しかし、それ以上に大切なのは、何を改善するために練習しているのかを明確にすることです。

たとえば、次のような違いがあります。

なんとなくの行動KPI表を使った行動
毎日ゲームをする週間勝率、苦手マップ勝率、リプレイ分析回数を記録する
負けたら落ち込む負けた理由を分類し、次の練習内容を決める
配信をする平均視聴者数、視聴維持率、フォロワー増加数を見る
大会に出る大会成績、試合後レビュー、改善点を記録する

KPI表を使うと、自分の努力が目標に近づいているか確認できます。

3. イベントマネジメント専攻にとってのKPI表

イベントマネジメント専攻の学生にとって、KPI表は「イベントを成功させるための運営管理表」です。

イベントでは、企画が面白いだけでは不十分です。

集客できるか。

当日スムーズに運営できるか。

参加者が満足するか。

SNSで広がるか。

次回につながるか。

こうしたことを確認するために、KPI表を作ります。

なんとなくの企画KPI表を使った企画
人を集めたい申込者数、告知閲覧数、当日来場率を記録する
盛り上げたいSNS投稿数、滞在時間、満足度を見る
売上を上げたい購入者数、客単価、商品別販売数を見る
運営を良くしたい待ち時間、問い合わせ件数、案内ミス件数を見る

KPI表を使うと、イベントの成功や課題を説明しやすくなります。

4. KPI表を作る基本手順

KPI表は、次の流れで作成します。

flowchart TB
A[テーマを決める] --> B[目的を書く]
B --> C[KGIを決める]
C --> D[KPIを5つ作る]
D --> E[測定方法を決める]
E --> F[改善策を書く]
F --> G[KPI表を完成させる]

手順1:テーマを決める

まず、自分が取り組むテーマを決めます。

eスポーツ専攻なら、自分の成長目標や大会参加目標をテーマにします。

テーマ例内容
ランクアップ計画3か月以内に上位ランクを目指す
大会出場計画校外大会でベスト8を目指す
配信成長計画SNSフォロワーや平均視聴者を増やす
弱点改善計画苦手マップ、終盤判断、エイムなどを改善する

イベントマネジメント専攻なら、実際に企画するイベントをテーマにします。

テーマ例内容
地域フードイベント地域の飲食店を知ってもらう
学校イベントオープンキャンパスや学園祭を企画する
企業体験イベント商品やサービスを体験してもらう
SNS拡散型イベント写真・動画投稿を増やすイベントを作る

手順2:目的を書く

次に、何のために取り組むのかを書きます。

目的は、KPI表全体の方向を決めます。

eスポーツ専攻の目的例

プロゲーマーを目指すために、3か月以内にランクを上げ、自分の実力を証明できる状態をつくる。
校外大会で結果を出すために、チーム連携と試合後分析を強化する。
プレイヤーとしての認知を高めるために、配信とショート動画投稿を継続する。

イベントマネジメント専攻の目的例

地域の飲食店を知ってもらうために、駅前で参加しやすいフードイベントを開催する。
学校の魅力を伝えるために、来場者が体験しながら学べるイベントを実施する。
商品を知ってもらうために、参加者が実際に試せる体験型イベントを企画する。

手順3:KGIを決める

KGIは、最終的に達成したい成果です。

eスポーツ専攻のKGI例

目的KGI
ランクを上げたい3か月以内に上位ランクへ到達する
大会で結果を出したい半年以内に校外大会でベスト8以上に入る
配信を伸ばしたい3か月以内にSNSフォロワー1,000人を達成する
弱点を改善したい苦手マップ勝率を50%以上にする

イベントマネジメント専攻のKGI例

目的KGI
地域イベントを成功させたい来場者300人、満足度4.0以上を達成する
SNSで広げたいハッシュタグ投稿100件を達成する
売上を作りたい物販売上20万円を達成する
次回開催につなげたい再来場意向80%以上を達成する

5. KPI表の完成例:eスポーツ専攻

テーマ:3か月以内にランクを上げる

項目内容
目的プロゲーマーを目指すために、3か月以内にランクを上げ、自分の実力を証明する
KGI3か月以内に上位ランクへ到達する

KPI表

KPI目標値測定方法数字が悪かった場合の改善策
週間勝率55%以上試合履歴を記録する負け試合を見返し、負け方を分類する
リプレイ分析回数週3回分析した試合数を記録する分析する曜日を固定し、1試合だけでも見返す
苦手マップ勝率50%以上マップ別勝率を記録する苦手マップだけを週2回集中練習する
終盤の単独デス回数1試合2回以内試合後に終盤のデスを記録する終盤3分の立ち回りだけをリプレイ確認する
練習後の振り返り週2回以上振り返りメモを残す練習後5分で「次に直すこと」を1つ書く

読み取り方

このKPI表では、ただ練習時間を増やすのではなく、勝率、分析、苦手克服、終盤判断、振り返りを見ています。

つまり、目的は「ゲームをたくさんすること」ではありません。

目的は、プロを目指すために、実力を上げることです。

そのため、KPIも実力向上に関係するものにしています。

6. KPI表の完成例:eスポーツ専攻・大会参加

テーマ:校外大会でベスト8を目指す

項目内容
目的大会で結果を出し、チーム加入やトライアウトに使える実績を作る
KGI半年以内に校外大会でベスト8以上に入る

KPI表

KPI目標値測定方法数字が悪かった場合の改善策
チーム練習回数週2回以上練習日を記録する固定曜日を決め、短時間でも実施する
スクリム勝率50%以上スクリム結果を記録する負けた試合の共通原因を整理する
連携ミス回数1試合3回以内試合後にミスを記録する報告ルールと役割分担を見直す
試合後レビュー毎回実施レビュー実施の有無を記録する試合後10分だけ振り返り時間を取る
大会想定練習月2回以上大会ルールで練習した回数を記録する本番形式の練習日を事前に決める

読み取り方

大会で結果を出すには、個人技だけではなく、チーム練習、連携、振り返り、本番形式の準備が必要です。

このKPI表では、「大会で勝つために必要な準備」が見える形になっています。

7. KPI表の完成例:イベントマネジメント専攻

テーマ:地域フードイベントを開催する

項目内容
目的地域の飲食店を知ってもらい、駅前に人の流れを作る
KGI来場者300人、満足度4.0以上、SNS投稿100件を達成する

KPI表

KPI目標値測定方法数字が悪かった場合の改善策
告知投稿閲覧数5,000回SNSインサイトで確認する投稿画像、タイトル、投稿時間を見直す
事前申込数100人申込フォームで確認する申込特典を追加し、申込導線を目立たせる
当日来場者数300人受付・カウントで記録する当日告知、看板、導線案内を増やす
受付待ち時間10分以内現場で時間を記録するQR受付、スタッフ配置、列整理を改善する
SNS投稿数100件ハッシュタグ投稿数を確認するフォトスポット、投稿特典、ハッシュタグ案内を強化する

読み取り方

このKPI表では、集客、申込、当日運営、SNS拡散までを確認しています。

来場者数だけではなく、受付待ち時間やSNS投稿数も見ることで、参加者体験と次回への広がりを確認できます。

8. KPI表の完成例:イベントマネジメント専攻・学校イベント

テーマ:オープンキャンパス内の体験イベント

項目内容
目的学校の魅力を伝え、入学希望者に学びのイメージを持ってもらう
KGI体験参加者40人、満足度4.0以上、資料請求15件を達成する

KPI表

KPI目標値測定方法数字が悪かった場合の改善策
体験予約数50件予約フォームで確認する告知文を分かりやすくし、体験内容を具体化する
当日参加者数40人受付で記録する事前リマインドを送る
体験満足度4.0以上アンケートで確認する説明時間を短くし、実際に触る時間を増やす
資料請求数15件申込フォームで確認する終了後の案内を強化する
質問件数20件以上スタッフが記録する質問しやすい雰囲気と時間を作る

読み取り方

学校イベントでは、ただ来てもらうだけではなく、参加者が「この学校で学ぶイメージ」を持てることが重要です。

そのため、体験満足度、資料請求数、質問件数などもKPIとして設定しています。

実習1:テーマを決める

自分の専攻に合わせて、今回作成するKPI表のテーマを決めてください。

eスポーツ専攻用

項目記入内容
競技タイトル
現在の実力・ランク
目指す状態
目標期間
自分の課題
今回作るKPI表のテーマ

イベントマネジメント専攻用

項目記入内容
イベント名
イベントの種類
対象者
会場
想定参加人数
今回作るKPI表のテーマ

実習2:目的とKGIを決める

eスポーツ専攻用

項目記入内容
何のために取り組むのか
最終的に達成したい成果
いつまでに達成したいか
KGI

イベントマネジメント専攻用

項目記入内容
何のためにイベントを行うのか
参加者にどんな体験をしてほしいか
イベント後に達成したい成果
KGI

実習3:KPIを5つ作る

KGIを達成するために、途中で確認するKPIを5つ作成してください。

eスポーツ専攻で考える視点

視点KPI例
試合結果勝率、ランクポイント、順位
練習練習時間、練習日数、集中練習時間
分析リプレイ分析回数、ミス分類数
苦手改善苦手マップ勝率、苦手キャラ対策回数
発信投稿本数、平均視聴者数、フォロワー増加数

イベントマネジメント専攻で考える視点

視点KPI例
集客告知閲覧数、申込者数、来場者数
体験満足度、滞在時間、再来場意向
運営待ち時間、問い合わせ件数、案内ミス件数
収益売上、購入者数、客単価
拡散SNS投稿数、ハッシュタグ数、動画再生数

記入欄

KPIなぜ必要か
1.
2.
3.
4.
5.

実習4:目標値と測定方法を決める

KPIを作ったら、目標値と測定方法を決めます。

記入欄

KPI目標値測定方法
1.
2.
3.
4.
5.

測定方法の例

KPI測定方法
勝率試合履歴を記録する
リプレイ分析回数分析した試合数をメモする
申込者数申込フォームで確認する
来場者数受付でカウントする
SNS投稿数ハッシュタグ検索で確認する
満足度アンケートで5段階評価を取る

実習5:数字が悪かった場合の改善策を考える

KPIは、数字を見るだけでは意味がありません。

数字が悪かった場合に、何を変えるかまで書きます。

記入欄

KPI目標値数字が悪かった場合の改善策
1.
2.
3.
4.
5.

改善策の書き方

悪い例:

もっと頑張る。
もっと練習する。
もっと告知する。

良い例:

負け試合の終盤3分だけを見返し、単独デスの原因を記録する。
告知画像を3種類作成し、反応が良いものを採用する。
受付にQRコードを設置し、案内スタッフを1人配置する。

改善策は、実際に動ける内容にします。

実習6:AIでKPI表のたたき台を作る

ここでは、AIを使ってKPI表のたたき台を作成します。

AIは、KPI表を一瞬で整えることができます。

ただし、最終判断は自分で行います。

eスポーツ専攻用プロンプト

私はプロゲーマーを目指している専門学生です。
自分の成長管理のためにKPI表を作成したいです。

以下の条件をもとに、目的、KGI、KPI5つ、目標値、測定方法、数字が悪かった場合の改善策を表で整理してください。

競技タイトル:
現在の実力・ランク:
目標:
目標期間:
得意なこと:
苦手なこと:
練習できる時間:
配信・SNS発信の有無:

イベントマネジメント専攻用プロンプト

私はイベントマネジメントを学ぶ専門学生です。
イベント企画の成果を管理するためにKPI表を作成したいです。

以下の条件をもとに、目的、KGI、KPI5つ、目標値、測定方法、数字が悪かった場合の改善策を表で整理してください。

イベント名:
イベントの目的:
対象者:
会場:
想定参加人数:
運営人数:
予算:
大切にしたい体験:

実習7:AIの案を修正する

AIが作ったKPI表をそのまま使わず、自分の状況に合わせて修正してください。

確認すること

確認項目内容
目的に合っているか自分の目標やイベント目的とつながっているか
KGIが最終成果になっているか途中の行動ではなく、最終的な成果になっているか
KPIが測定できるか実際に記録できる数字か
目標値が現実的か高すぎたり低すぎたりしないか
改善策が行動になっているか「頑張る」ではなく、具体的に何を変えるか書かれているか

修正欄

AIが出した案問題点修正後の案

実習8:KPI表を完成させる

最後に、自分のKPI表を完成させます。

eスポーツ専攻用:KPI表

項目内容
競技タイトル
現在の実力・ランク
目的
KGI
KPI目標値測定方法改善策
1.
2.
3.
4.
5.

イベントマネジメント専攻用:KPI表

項目内容
イベント名
イベントの目的
対象者
KGI
KPI目標値測定方法改善策
1.
2.
3.
4.
5.

まとめ

KPI表は、目的、KGI、KPI、測定方法、改善策を一覧で整理するための表です。

eスポーツ専攻の学生にとっては、プロゲーマーを目指すための成長管理に使えます。

ランク、勝率、苦手マップ、リプレイ分析、チーム練習、配信活動などを見える化することで、自分が何を改善すべきか分かりやすくなります。

イベントマネジメント専攻の学生にとっては、イベントを成功させるための運営管理に使えます。

集客、満足度、売上、待ち時間、SNS投稿数などを見える化することで、イベント後の改善につなげられます。

大切なのは、KPI表をきれいに作ることではありません。

数字を見る。

原因を考える。

次の行動を決める。

もう一度、数字を見る。

この流れを繰り返すために、KPI表を使います。

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