AI活用と意思決定デザイン

AIでKPI設計を支援する:企画・分析・改善案を出す

この節で扱うこと

これまでの授業では、目的、ゴール、KGI、KPI、評価軸、定量指標、定性指標、そしてKPIをもとに意思決定する方法を学びました。

今回は、それらをAIで効率よく作る方法を学びます。

AIを使うと、次のような作業を早く進められます。

作業AIでできること
目的の整理何のために取り組むのかを文章化する
KGIの作成最終目標の候補を出す
KPIの作成途中で確認する指標を複数提案する
評価軸の作成企画案や練習案を比べる基準を作る
改善策の作成数字が悪かった場合の次の一手を出す
振り返り結果をもとに、改善ポイントを整理する

ただし、AIは万能ではありません。

AIは、あなたの実力、性格、会場の空気、チームの雰囲気、当日のトラブルまでは完全には分かりません。

そのため、AIにすべて任せるのではなく、

「AIにたたき台を作らせる」

「自分で確認する」

「現実に合わせて直す」

という使い方が重要です。

到達目標

到達目標内容
AIでたたき台を作れる目的・KGI・KPI・評価軸・改善策をAIに提案させられる
AIへの指示文を作れる必要な条件を入れて、使える回答を引き出せる
AIの回答を見直せるそのまま使わず、現実に合うか確認できる
自分の専攻に応用できるeスポーツの成長計画、イベント企画の両方に使える
最終的に自分で判断できるAIの案から、自分に合うものを選べる

1. AIは何をしてくれるのか

AIは、考える作業をすべて代わりにやってくれる存在ではありません。

しかし、白紙の状態から最初の形を作ることは得意です。

たとえば、次のような状態のときに役立ちます。

KPIと言われても何を書けばいいか分からない。
目的とゴールの違いが分からない。
自分の練習計画をどう数字にすればいいか分からない。
イベントの成果を何で測ればいいか分からない。
改善策が思いつかない。

このようなとき、AIに条件を入力すると、候補を出してくれます。

つまり、AIは「正解を決める先生」ではなく、「最初の案を一緒に作る相棒」として使います。

2. AIに任せてよいこと・任せてはいけないこと

AIを使うときは、任せてよい作業と、人間が判断すべき作業を分けます。

AIに任せてよいこと

作業内容
候補を出すKGI、KPI、評価軸、改善策の案を出す
表に整理する情報を見やすくまとめる
言葉を整える目的やゴールを分かりやすい文章にする
抜け漏れを探す考えていなかった視点を追加する
比較する複数案のメリット・デメリットを整理する

AIに任せてはいけないこと

作業理由
最終判断実際に動くのは自分たちだから
現実性の判断会場・予算・実力・時間は本人の方が分かるから
数字の確定高すぎる目標や低すぎる目標になる可能性があるから
そのまま提出自分の考えが入っていない成果物になるから
責任の丸投げ結果に責任を持つのは人間だから

AIは便利ですが、最後に判断するのは自分です。

3. よいAI指示文に必要な要素

AIから使える回答をもらうには、入力する情報が重要です。

雑に聞くと、雑な答えが返ってきます。

悪い指示文

KPIを考えて。

これだけでは、AIは何のKPIを作ればよいか分かりません。

良い指示文

私はプロゲーマーを目指している専門学生です。
現在はFPSタイトルを練習しており、3か月以内にランクを上げたいです。
現在の課題は、終盤の判断ミスと苦手マップでの勝率の低さです。

この条件をもとに、KGIを1つ、KPIを5つ作成してください。
それぞれについて、測定方法と数字が悪かった場合の改善策も表で整理してください。

このように、条件を具体的に入れると、AIは使いやすい回答を出しやすくなります。

4. AIに入れるべき情報

AIに依頼するときは、次の情報を入れると精度が上がります。

eスポーツ専攻の場合

入れる情報
競技タイトルFPS、格闘ゲーム、MOBAなど
現在の実力現在のランク、勝率、得意・苦手
目標ランク到達、大会成績、配信成長など
期間1か月、3か月、半年など
練習時間週に何時間練習できるか
課題エイム、判断、連携、メンタル、発信など
活動内容ランク、スクリム、大会、配信、SNSなど

イベントマネジメント専攻の場合

入れる情報
イベント名地域フェス、企業イベント、学校イベントなど
目的集客、満足度向上、売上、認知拡大など
対象者学生、地域住民、企業、ファンなど
会場学校、商業施設、ホール、オンラインなど
予算使える金額
運営人数スタッフ数
想定参加人数50人、100人、300人など
大切にしたい体験楽しい、交流できる、学べる、写真を撮りたくなるなど

AIは、条件が多いほど具体的な案を出しやすくなります。

5. eスポーツ専攻の具体例

例1:ランクを上げたい場合

入力する条件

私はプロゲーマーを目指している専門学生です。
競技タイトルは〇〇です。
現在のランクは中級帯で、3か月以内に上位ランクへ到達したいです。
課題は、終盤の判断ミス、苦手マップでの勝率の低さ、リプレイ分析不足です。
週に15時間練習できます。

この条件をもとに、KGIを1つ、KPIを5つ作成してください。
それぞれについて、測定方法と改善策も表で整理してください。

AIに期待する出力例

種類内容
KGI3か月以内に上位ランクへ到達する
KPI 1週間勝率55%以上
KPI 2リプレイ分析を週3回行う
KPI 3苦手マップ勝率50%以上
KPI 4終盤の単独デスを1試合2回以内にする
KPI 5週1回、練習内容を振り返る

人間が確認すること

確認項目内容
目標は現実的か3か月で到達可能なランクか
測定できるか勝率やリプレイ分析回数を記録できるか
自分の課題に合うか本当に終盤判断が課題なのか
続けられるか週3回の分析が生活に合うか

AIの提案は、あくまで候補です。

自分の状況に合わせて修正します。

例2:大会で結果を出したい場合

私はプロゲーマーを目指している専門学生です。
半年以内に校外大会でベスト8以上に入りたいです。
現在は個人技には自信がありますが、チーム連携と試合後の振り返りが不足しています。
週2回チーム練習ができます。

この目標に向けて、KGI、KPI、評価軸、改善策を表で作ってください。

出力例

項目内容
KGI半年以内に校外大会でベスト8以上に入る
KPI 1週2回チーム練習を行う
KPI 2スクリム勝率50%以上
KPI 3試合後レビューを毎回行う
KPI 4連携ミスを1試合3回以内にする
KPI 5大会前に想定ルールで練習試合を5回行う

このように、AIを使うと「何を見ればよいか」の候補が出ます。

ただし、ゲームタイトルやチームの状況によって、必要なKPIは変わります。

そのため、最終的には自分たちの実情に合わせます。

6. イベントマネジメント専攻の具体例

例1:地域イベントを企画する場合

入力する条件

私はイベントマネジメントを学ぶ専門学生です。
地域の飲食店を知ってもらうために、駅前でフードイベントを企画しています。

対象者は地域住民、学生、仕事帰りの社会人です。
会場は駅前広場で、想定来場者は300人です。
運営人数は8人、予算は20万円です。
大切にしたい体験は、地元のお店を知り、写真を撮ってSNSに投稿したくなる体験です。

この条件をもとに、目的、KGI、KPI、評価軸、改善策を表で整理してください。

AIに期待する出力例

項目内容
目的地域の飲食店を知ってもらい、駅前に人の流れを作る
KGI来場者300人、SNS投稿100件、満足度4.0以上
KPI 1告知投稿閲覧数5,000回
KPI 2事前予約100件
KPI 3フォトスポット利用50件
KPI 4受付待ち時間10分以内
KPI 5アンケート回答数100件

人間が確認すること

確認項目内容
予算内で可能かフォトスポットや告知制作に費用がかかりすぎないか
運営人数で回せるか8人で受付・案内・撮影誘導までできるか
会場に合っているか駅前広場で安全に実施できるか
測定できるかSNS投稿数や待ち時間を記録できるか

AIが提案したものを、そのまま実行計画にするのではありません。

自分たちの現場に合わせて、できる形に調整します。

7. AI活用の基本手順

AIを使うときは、次の流れで進めます。

flowchart TB
A[自分の条件を整理する] --> B[AIに入力する]
B --> C[たたき台を出してもらう]
C --> D[現実に合うか確認する]
D --> E[自分で修正する]
E --> F[最終案にする]

手順1:自分の条件を整理する

まず、自分の目標や企画内容を整理します。

ここが曖昧だと、AIの答えも曖昧になります。

手順2:AIに入力する

目的、対象者、課題、制約条件を入れて指示します。

手順3:たたき台を出してもらう

AIに、KGI・KPI・評価軸・改善策を表で出してもらいます。

手順4:現実に合うか確認する

時間、予算、人数、実力、会場、測定方法を確認します。

手順5:自分で修正する

AIの案を、自分たちが実行できる形に直します。

手順6:最終案にする

最後に、自分の言葉で整理して提出します。

実習1:AIに入れる情報を整理する

自分の専攻に合わせて、AIに入力する情報を整理してください。

eスポーツ専攻用

項目記入内容
競技タイトル
現在のランク・実力
目標
目標期間
練習できる時間
得意なこと
苦手なこと
大会参加経験
配信・SNS発信の有無

イベントマネジメント専攻用

項目記入内容
イベント名
イベントの目的
対象者
会場
想定参加人数
運営人数
予算
大切にしたい体験

実習2:AIに依頼する文章を作る

次の型を使って、自分用のAI指示文を作成してください。

eスポーツ専攻用

私はプロゲーマーを目指している専門学生です。
競技タイトルは____です。
現在の実力は____です。
目標は____です。
目標期間は____です。
練習できる時間は____です。
得意なことは____です。
苦手なことは____です。

この条件をもとに、KGIを1つ、KPIを5つ、評価軸を5つ、改善策を5つ提案してください。
それぞれについて、なぜ必要か、どう測るか、数字が悪かった場合に何を変えるかを表で整理してください。

イベントマネジメント専攻用

私はイベントマネジメントを学ぶ専門学生です。
イベント名は____です。
目的は____です。
対象者は____です。
会場は____です。
想定参加人数は____です。
運営人数は____です。
予算は____です。
大切にしたい体験は____です。

この条件をもとに、KGIを1つ、KPIを5つ、評価軸を5つ、改善策を5つ提案してください。
それぞれについて、なぜ必要か、どう測るか、数字が悪かった場合に何を変えるかを表で整理してください。

実習3:AIの回答をチェックする

AIの回答を見て、次の観点で確認してください。

確認項目はい / いいえ修正が必要な点
自分の目的に合っている
KGIが最終目標になっている
KPIが途中で確認できる指標になっている
測定方法が現実的である
改善策が具体的である
自分たちの時間・人数・予算で実行できる

実習4:AIの案を修正する

AIの提案をそのまま使わず、自分の状況に合わせて修正してください。

AIが出した案違和感・問題点修正後の案

実習5:AI活用後の最終シートを作る

eスポーツ専攻用:AI活用後のKPI設計シート

項目内容
競技タイトル
現在の実力
目標
KGI
KPI 1
KPI 2
KPI 3
KPI 4
KPI 5
採用した評価軸
最初に改善すること
AI案から修正した点

イベントマネジメント専攻用:AI活用後のKPI設計シート

項目内容
イベント名
イベントの目的
対象者
KGI
KPI 1
KPI 2
KPI 3
KPI 4
KPI 5
採用した評価軸
最初に改善すること
AI案から修正した点

まとめ

AIを使うと、KGI・KPI・評価軸・改善策のたたき台を早く作ることができます。

しかし、AIが出した案は完成品ではありません。

eスポーツ専攻の学生であれば、AIの案が自分の競技タイトル、実力、練習時間、課題に合っているか確認する必要があります。

イベントマネジメント専攻の学生であれば、AIの案が会場、予算、運営人数、対象者、イベント目的に合っているか確認する必要があります。

AIは、考えることを楽にしてくれます。

でも、最後に選ぶのは自分です。

この授業で大切なのは、AIに任せることではありません。

AIで早く作る。

人間が現実に合わせて直す。

自分で判断して実行する。

この流れを身につけることです。

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