
評価軸をつくる:企画案を比べて選ぶ
この節で扱うこと
前回は、KGIとKPIを使って、成果を数字で見える化する考え方を学びました。
今回は、複数の企画案を比べて選ぶための「評価軸」を作ります。
企画を考えていると、いろいろな案が出てきます。
「このイベント、面白そう」
「この練習方法、強くなれそう」
「この配信企画、伸びそう」
「この会場、雰囲気が良さそう」
しかし、面白そうに見える案が、必ずしも良い案とは限りません。
eスポーツ専攻の学生であれば、プロゲーマーを目指すうえで、練習方法・大会参加・配信活動・SNS発信・チーム活動など、どれを優先するか判断する場面があります。
イベントマネジメント専攻の学生であれば、地域イベント・企業イベント・学園祭企画・物販企画・ステージ演出・集客施策など、複数の企画案から実施するものを選ぶ場面があります。
そのときに必要なのが、評価軸です。
評価軸とは、「どの案を選ぶべきか」を判断するための基準です。
到達目標
| 到達目標 | 内容 |
|---|---|
| 評価軸の意味を説明できる | 企画案を比べるための判断基準だと理解できる |
| 評価軸を自分で作れる | 目的に合わせて、比較に必要な項目を設定できる |
| 複数案を比較できる | 感覚だけでなく、表を使って企画案を比べられる |
| 自分の専攻に応用できる | eスポーツの成長計画、イベント企画の両方に使える |
| AIを使って評価表を作れる | 評価軸や比較表のたたき台をAIで作成できる |
1. 評価軸とは何か
評価軸とは、複数の選択肢を比べるときに使う判断基準です。
たとえば、スマートフォンを買うときにも、人は無意識に評価軸を使っています。
| 評価軸 | 見ていること |
|---|---|
| 価格 | 予算に合っているか |
| カメラ性能 | 写真や動画がきれいに撮れるか |
| バッテリー | 長時間使えるか |
| デザイン | 自分の好みに合っているか |
| 容量 | 写真やアプリを十分に保存できるか |
イベントやeスポーツでも同じです。
「なんとなく良さそう」ではなく、何を基準に良いと判断するのかを決める必要があります。
2. なぜ評価軸が必要なのか
評価軸がないと、企画の選び方が感覚に寄りすぎます。
たとえば、イベント企画で次の3案が出たとします。
| 企画案 | 内容 |
|---|---|
| A案 | 大きなステージを使った派手なイベント |
| B案 | 小規模だけど参加者と深く交流できるイベント |
| C案 | SNS投稿を狙った撮影スポット中心のイベント |
このとき、評価軸がないと、
「A案が一番目立ちそう」
「B案の方が温かい感じがする」
「C案は今っぽい」
という感覚の話になりやすくなります。
もちろん感覚は大切です。
ただし、実際に選ぶときには、目的に合っているか、予算内でできるか、運営できるか、成果につながるかを見る必要があります。
評価軸があると、判断が整理されます。
| 評価軸 | A案 | B案 | C案 |
|---|---|---|---|
| 集客力 | 5 | 3 | 4 |
| 体験価値 | 3 | 5 | 4 |
| 運営しやすさ | 2 | 4 | 3 |
| 予算内でできるか | 2 | 5 | 4 |
| SNS拡散性 | 4 | 2 | 5 |
このように表にすると、どの案がどの面で強いのかが見えます。
3. eスポーツ専攻における評価軸
eスポーツ専攻の学生にとって、評価軸は「プロゲーマーを目指すために、どの行動を優先するか」を決めるために使えます。
プロを目指す場合、やるべきことは多くあります。
| 行動案 | 内容 |
|---|---|
| ランク練習 | 個人の実力を上げる |
| リプレイ分析 | 自分のミスや判断を見直す |
| スクリム参加 | チーム戦や実戦経験を積む |
| 大会参加 | 実績を作る |
| 配信活動 | 認知やファンを増やす |
| ショート動画投稿 | SNSで見つけてもらう |
| コーチングを受ける | 改善点を第三者に見てもらう |
全部大切に見えます。
しかし、時間は限られています。
そのため、自分のKGIに合わせて、どの行動を優先するか決める必要があります。
eスポーツ専攻で使いやすい評価軸
| 評価軸 | 見るポイント |
|---|---|
| 実力向上につながるか | 勝率、判断力、操作精度、連携力が伸びるか |
| 大会実績につながるか | 公式大会やトライアウトに活かせるか |
| 継続しやすいか | 自分の生活リズムの中で続けられるか |
| 弱点改善につながるか | 自分の苦手分野を改善できるか |
| 発信・認知につながるか | SNS、配信、ポートフォリオに活かせるか |
| メンタル・体調に無理がないか | 燃え尽きや睡眠不足につながらないか |
プロゲーマーを目指す場合、「たくさんプレイする」だけでは足りません。
何を伸ばすために、その行動をするのかを考える必要があります。
4. イベントマネジメント専攻における評価軸
イベントマネジメント専攻の学生にとって、評価軸は「どの企画案を実施するか」を決めるために使います。
イベントでは、面白さだけでなく、実現可能性も重要です。
| 評価軸 | 見るポイント |
|---|---|
| 集客力 | 人が集まりそうか |
| 体験価値 | 参加者にとって楽しい・印象に残る体験か |
| 運営しやすさ | スタッフ人数、準備時間、当日の進行に無理がないか |
| 収益性 | 売上、協賛、物販、次回開催につながるか |
| 安全性 | 混雑、事故、迷子、炎上などのリスクが低いか |
| 拡散性 | SNS投稿、写真、動画、口コミが生まれやすいか |
| 目的との一致 | イベントを行う理由と合っているか |
イベントマネジメントでは、企画の華やかさに引っ張られすぎると、当日の運営が破綻することがあります。
だからこそ、事前に評価軸を決めて、冷静に比べることが必要です。
5. 評価軸を作る手順
評価軸は、思いつきで作るのではなく、目的から逆算して作ります。
手順1:目的を確認する
まず、何のために取り組むのかを確認します。
| 専攻 | 目的の例 |
|---|---|
| eスポーツ | プロを目指すために、3か月でランクを上げる |
| eスポーツ | 大会で結果を出すために、チーム連携を強化する |
| イベント | 地域の飲食店を知ってもらう |
| イベント | 来場者満足度の高い体験イベントを作る |
手順2:KGIを確認する
次に、最終的に達成したい成果を確認します。
| 目的 | KGIの例 |
|---|---|
| ランクを上げる | 3か月以内に最高ランクへ到達する |
| 大会で結果を出す | 半年以内に公式大会でベスト8に入る |
| 地域イベントを成功させる | 来場者300人、SNS投稿100件を達成する |
| 体験イベントを成功させる | 満足度4.0以上、再来場意向80%以上を達成する |
手順3:比較したい案を出す
次に、比べたい案を出します。
eスポーツ専攻なら、練習方法や活動方針を比較します。
| 案 | 内容 |
|---|---|
| A案 | ランク練習を毎日行う |
| B案 | リプレイ分析を増やす |
| C案 | スクリムと大会参加を増やす |
| D案 | 配信・SNS発信を強化する |
イベントマネジメント専攻なら、企画案を比較します。
| 案 | 内容 |
|---|---|
| A案 | ステージイベント中心 |
| B案 | 体験ブース中心 |
| C案 | フード・物販中心 |
| D案 | SNS投稿企画中心 |
手順4:比較に必要な評価軸を決める
目的とKGIに合わせて、評価軸を選びます。
評価軸は、多すぎると分かりにくくなります。
初心者は、まず5つから6つ程度にすると扱いやすいです。
手順5:点数をつける
各案に対して、評価軸ごとに点数をつけます。
| 点数 | 意味 |
|---|---|
| 5 | とても良い |
| 4 | 良い |
| 3 | 普通 |
| 2 | やや弱い |
| 1 | 弱い |
点数は、完全に正解があるものではありません。
ただし、「なぜその点数にしたのか」を説明できるようにします。
手順6:採用案を決める
最後に、合計点や目的との一致を見て、採用する案を決めます。
ここで大切なのは、点数が一番高い案を自動的に選ぶことではありません。
たとえば、合計点は高くても、予算や人員に合わない案は実施できません。
逆に、点数は少し低くても、目的に最も合う案を選ぶこともあります。
評価表は、答えを決める機械ではありません。
考えを整理するための道具です。
6. 評価軸の悪い例と良い例
評価軸は、分かりやすく、比較できる形にする必要があります。
悪い例
| 評価軸 | 問題点 |
|---|---|
| すごさ | 何を見てすごいと判断するのか曖昧 |
| いい感じ | 比較できない |
| 盛り上がりそう | 具体的な基準がない |
| 強そう | eスポーツでは何が強いのか不明確 |
| バズりそう | 何をもってバズるとするのか不明確 |
良い例
| 評価軸 | 理由 |
|---|---|
| 集客力 | 人が集まる可能性を比べられる |
| 実力向上への効果 | 練習案が成長につながるか比べられる |
| 継続しやすさ | 無理なく続けられるか確認できる |
| 運営しやすさ | 当日の実現可能性を判断できる |
| SNS拡散性 | 投稿や動画で広がりやすいか判断できる |
| 安全性 | トラブルや事故のリスクを考えられる |
評価軸は、できるだけ「何を見れば点数をつけられるか」が分かる表現にします。
実習1:評価軸を見分ける
次の言葉のうち、評価軸として使いやすいものに○、使いにくいものに△をつけてください。
問題
| 言葉 | ○ / △ | 理由 |
|---|---|---|
| 集客力 | ||
| なんか良い感じ | ||
| 実力向上への効果 | ||
| バズりそう | ||
| 運営しやすさ | ||
| かっこよさ | ||
| 継続しやすさ | ||
| 安全性 | ||
| 楽しそう | ||
| 目的との一致 |
解答例
| 言葉 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 集客力 | ○ | 人が集まりそうかを比較できる |
| なんか良い感じ | △ | 判断基準が曖昧 |
| 実力向上への効果 | ○ | 練習や活動の効果を比較できる |
| バズりそう | △ | 何をもってバズるかが曖昧 |
| 運営しやすさ | ○ | 人数・時間・準備の面で比較できる |
| かっこよさ | △ | 人によって判断が分かれやすい |
| 継続しやすさ | ○ | 続けられるかを判断できる |
| 安全性 | ○ | リスクの少なさを比較できる |
| 楽しそう | △ | 何が楽しいのか分かりにくい |
| 目的との一致 | ○ | 目的に合っているかを判断できる |
実習2:専攻別に評価軸を選ぶ
自分の専攻に合わせて、使う評価軸を5つ選んでください。
eスポーツ専攻用
プロゲーマーを目指すために、自分の行動案を比べる評価軸を選びます。
| 評価軸候補 | 選ぶ場合は○ |
|---|---|
| 実力向上につながるか | |
| 大会実績につながるか | |
| 継続しやすいか | |
| 弱点改善につながるか | |
| 発信・認知につながるか | |
| メンタル・体調に無理がないか | |
| チーム連携が高まるか | |
| トライアウトに活かせるか |
イベントマネジメント専攻用
イベント企画案を比べる評価軸を選びます。
| 評価軸候補 | 選ぶ場合は○ |
|---|---|
| 集客力 | |
| 体験価値 | |
| 運営しやすさ | |
| 収益性 | |
| 安全性 | |
| SNS拡散性 | |
| 協賛企業への価値 | |
| 目的との一致 |
実習3:eスポーツ専攻向け 評価マトリクスを作る
プロゲーマーを目指す学生は、自分の成長につながる行動案を比較します。
前提例
KGI:3か月以内にランクを上げ、校外大会に出場できる実力をつける。
比較する案
| 案 | 内容 |
|---|---|
| A案 | 毎日ランクマッチを多く回す |
| B案 | 週3回リプレイ分析を行う |
| C案 | スクリムや練習試合に参加する |
| D案 | 配信とショート動画投稿を強化する |
評価表
| 案 | 実力向上 | 弱点改善 | 継続しやすさ | 大会実績への近さ | 発信・認知 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A案:ランクマッチ重視 | ||||||
| B案:リプレイ分析重視 | ||||||
| C案:スクリム参加重視 | ||||||
| D案:配信・SNS重視 |
記入のポイント
点数をつけるときは、次のように考えます。
| 評価軸 | 見ること |
|---|---|
| 実力向上 | 勝率、判断力、操作精度が伸びそうか |
| 弱点改善 | 自分の苦手を直せそうか |
| 継続しやすさ | 生活リズムの中で続けられそうか |
| 大会実績への近さ | 大会で勝つ力につながるか |
| 発信・認知 | 自分を知ってもらう材料になるか |
実習4:イベントマネジメント専攻向け 評価マトリクスを作る
イベントマネジメント専攻の学生は、複数のイベント企画案を比較します。
前提例
KGI:来場者300人、満足度4.0以上、SNS投稿100件を達成する。
比較する案
| 案 | 内容 |
|---|---|
| A案 | ステージパフォーマンス中心のイベント |
| B案 | 体験ブース中心のイベント |
| C案 | フード・物販中心のイベント |
| D案 | SNSフォトスポット中心のイベント |
評価表
| 案 | 集客力 | 体験価値 | 運営しやすさ | 収益性 | SNS拡散性 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A案:ステージ中心 | ||||||
| B案:体験ブース中心 | ||||||
| C案:フード・物販中心 | ||||||
| D案:フォトスポット中心 |
記入のポイント
| 評価軸 | 見ること |
|---|---|
| 集客力 | 人が来たいと思う内容か |
| 体験価値 | 参加者の満足度につながるか |
| 運営しやすさ | 人数・準備・当日進行に無理がないか |
| 収益性 | 売上や協賛につながるか |
| SNS拡散性 | 写真・動画・投稿が生まれやすいか |
実習5:点数の理由を書く
点数をつけたら、なぜその点数にしたのかを書きます。
評価表は、点数だけでは不十分です。
理由があることで、他の人に説明できる判断になります。
記入欄
| 選んだ案 | 高く評価した点 | 不安な点 | 採用する理由 |
|---|---|---|---|
eスポーツ専攻の記入例
| 選んだ案 | 高く評価した点 | 不安な点 | 採用する理由 |
|---|---|---|---|
| B案:リプレイ分析重視 | 自分の負けパターンを見つけやすい | すぐに楽しい成果は出にくい | ただプレイ時間を増やすより、弱点改善につながるから |
イベントマネジメント専攻の記入例
| 選んだ案 | 高く評価した点 | 不安な点 | 採用する理由 |
|---|---|---|---|
| B案:体験ブース中心 | 来場者の満足度が高まりやすい | スタッフ配置が必要 | 目的が「参加者に体験してもらうこと」なので、最も合っているから |
実習6:AIで評価軸と評価表のたたき台を作る
ここでは、AIを使って評価軸と評価表のたたき台を作ります。
AIは、最終判断をする存在ではありません。
ただし、比較表を作る作業を早くすることはできます。
eスポーツ専攻用プロンプト
私はプロゲーマーを目指している専門学生です。
自分の成長計画を考えるために、複数の行動案を比較したいです。
以下の条件をもとに、評価軸を5つ作成し、各案を5点満点で比較する評価表を作ってください。
点数の理由も初心者に分かるように書いてください。
競技タイトル:
現在のランク・実力:
目標:
目標期間:
比較したい行動案:
1.
2.
3.
4.
イベントマネジメント専攻用プロンプト
私はイベントマネジメントを学ぶ専門学生です。
イベント企画案を比較するために、評価軸と評価表を作りたいです。
以下の条件をもとに、評価軸を5つ作成し、各企画案を5点満点で比較する評価表を作ってください。
点数の理由も初心者に分かるように書いてください。
イベントの目的:
KGI:
対象者:
会場:
予算:
運営人数:
比較したい企画案:
1.
2.
3.
4.
実習7:AIの評価をそのまま使わず、自分で修正する
AIが作った評価表は、そのまま提出しません。
AIは、現場の事情や自分の本当の課題をすべて知っているわけではないからです。
確認すること
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的に合っているか | 最初に決めた目的とズレていないか |
| 評価軸が曖昧でないか | 「良さそう」「バズりそう」などになっていないか |
| 点数の理由が説明できるか | なぜその点数なのか自分で話せるか |
| 現実的か | 時間・人数・予算・実力に合っているか |
| 自分が動ける内容か | 他人任せの計画になっていないか |
修正記入欄
| AIが出した評価軸・点数 | 違和感・問題点 | 自分で修正した内容 |
|---|---|---|
実習8:採用案を1つ選ぶ
最後に、比較した案の中から、採用する案を1つ選びます。
記入欄
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 採用する案 | |
| 選んだ理由 | |
| 一番強い評価軸 | |
| 一番不安な評価軸 | |
| 不安を減らすために行うこと |
実習9:評価軸シートを完成させる
eスポーツ専攻用:評価軸シート
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 競技タイトル | |
| 現在の実力・ランク | |
| 目標 | |
| KGI | |
| 比較した行動案 | |
| 使用した評価軸 | |
| 最も評価が高かった案 | |
| 採用する案 | |
| 採用理由 | |
| 明日から行う最初の行動 |
イベントマネジメント専攻用:評価軸シート
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| イベント名 | |
| イベントの目的 | |
| KGI | |
| 対象者 | |
| 比較した企画案 | |
| 使用した評価軸 | |
| 最も評価が高かった案 | |
| 採用する案 | |
| 採用理由 | |
| 次に確認すること |
まとめ
評価軸とは、複数の案を比べて選ぶための判断基準です。
eスポーツ専攻の学生にとっては、プロゲーマーを目指すために、練習・分析・大会参加・配信・SNS発信などの行動を比べる道具になります。
イベントマネジメント専攻の学生にとっては、複数の企画案を比べて、どれを実施するか決める道具になります。
大切なのは、感覚を捨てることではありません。
感覚だけで決めず、目的・KGI・評価軸を使って、説明できる判断にすることです。
評価軸を作れるようになると、「なぜその案を選ぶのか」を他人に説明できます。